SGLT2阻害薬による、心血管系(CV)高リスク2型糖尿病(DM)例に対する「尿酸値低下」・「痛風発作・尿酸低下薬服用減少」作用は、すでに2019年、CANVAS Programの後付解析で示されている。そこで注目されたのは、SGLT2阻害薬の尿酸低下作用がアロプリノールやフェブキソスタットに比べ弱いにもかかわらず、有意な「痛風発作・尿酸低下薬服用減少」作用が認められた点である。尿酸低下を介さない痛風抑制作用の存在も示唆された。
そして9月27日からオンライン開催されている欧州糖尿病学会(EASD)にて報告された、EMPA-REG OUTCOME試験の後付解析でも同様の知見が得られ、クラスエフェクトの可能性が高くなった。João Pedro Ferreira氏(ロレーヌ大学、フランス)が報告した。
EMPA-REG OUTCOME試験に登録されたのは、CV高リスクの2型DM 7020例である。SGLT2阻害薬群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で観察された。
試験開始時に尿酸低下薬を服用していたのは6%のみ。平均尿酸値は、尿酸低下薬非服用群で5.9mg/dL、服用群で6.4mg/dLだった。
試験開始52週間後に全体で比較すると、SGLT2阻害薬群の平均尿酸値は、プラセボ群に比べ、0.37mg/dLのみだが、有意に低値となっていた。
次に「痛風発作出現・尿酸低下薬服用」の頻度を、試験開始時尿酸低下薬「非服用」の6607例で比較した。するとSGLT2阻害薬群:14.1/1000例・年 vs.プラセボ群:21.6/1000例・年となり、SGLT2阻害薬群におけるハザード比(HR)は0.67(95%信頼区間[CI]:0.53-0.85)だった。両群の発生率曲線が乖離し始めたのは、試験開始1年後である。
なお、先述CANVAS Programにおける「痛風発作出現・尿酸低下薬服用」頻度は、SGLT2阻害薬群:4.1/1000例・年、プラセボ群:6.6/1000例・年であり、HRは0.53(95%CI:0.40-0.71)だった。両群間における平均尿酸値の差は0.39mg/dL。今回の報告と同程度である。
質疑応答では座長のJan Eriksson氏が、SGLT2阻害薬による痛風発作抑制作用の機序について問うたが、報告者のFerreira氏が報告終了と同時にウェブから退出したため、回答は得られなかった。ライブ開催の学会ではまず見られない(珍)光景だった。
本試験はBoehringer Ingelheim(BI) & Eli Lilly and Company Diabetes Allianceの出資を受け実施された。また今回の報告に当たっては、BI出資による外部会社の編集補助を受けた。