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性器の形態異常[私の治療]

No.5091 (2021年11月20日発行) P.47

山田恭輔 (東京慈恵会医科大学附属第三病院産婦人科教授)

登録日: 2021-11-18

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  • ミュラー管は,女性生殖器の卵管,子宮,腟上部に分化する。胎生期に男女ともにみられる構造で,はじめ中腎とウォルフ管(中腎管)の外側を下行する。両側のミュラー管が正中線上で癒合し,尿生殖洞の背側壁に達するが,これらの分化過程に異常が起こると,以下のような様々な性器の形態異常を生じる。

    ①処女膜閉鎖:尿生殖洞の分化異常により処女膜が完全に閉鎖している。
    ②腟欠損症:ミュラー管の分化異常により腟を欠く疾患であり,子宮の欠損を伴うことが多い。機能性子宮がない場合をMayer-Rokitansky-Küster-Hauser(MRKH)症候群という。
    ③obstructed hemivagina and ipsilateral renal anomaly(OHVIRA)症候群:重複子宮,重複腟,患側腟閉鎖による腟留血腫,患側腎低形成を伴う。胎生期におけるウォルフ管の分化異常とミュラー管の癒合不全により発生する。④Herlyn-Werner-Wunderlich(HWW)症候群:重複子宮,子宮内腔と交通性がみられるガートナー管囊胞に同側腎無形成を伴う症例がHerlyn-Werner症候群として報告され,重複子宮,傍子宮頸部囊胞(一側盲角子宮),同側腎無形性を伴う症例がWunderlich症候群として報告された。

    これらの症候群の概念を合わせ,重複子宮,重複腟,片側腟閉鎖,同側腎無形成,および子宮頸部の腫瘤を伴う症例がHWW症候群として報告されている。非常に稀な疾患であり,しばしばOHVIRA症候群と混同され,正確な頻度は不明である。

    ▶診断のポイント

    性器の形態異常の分類は,これまでミュラー管の分化異常として分類された米国不妊学会(American Fertility Society)の分類法や,機能性子宮のある場合とない場合の牧野田らによる分類法が用いられてきたが,最近では発生学的な観点から分類が見直されている。欧州ヒト生殖医学会(European Society of Human Reproduction and Embryology:ESHRE)/欧州産婦人科内視鏡学会(European Society for Gynaecological Endoscopy:ESGE)は,非対称性の子宮や腟の形態異常まで分類することができる方法を提唱している。

    【処女膜閉鎖】

    原発性無月経であり,初経年齢を過ぎてから月経周期に合致して急性腹症を繰り返す月経モリミナを主症状とする。腟留血腫,子宮留血腫,卵管留血腫などを生じる。外陰部の視診では,処女膜は閉鎖して腟口を欠き膨隆し,腟内の貯留血液を透視できる。

    【腟欠損症】

    原発性無月経で発見されるが,正常卵巣を認めるため乳房や外性器の発育は正常である。機能性子宮がある場合は,処女膜閉鎖と同様な症状を呈する。MRKH症候群では,腟は欠損し,子宮は瘢痕化または完全に欠損するなど,解剖学的に明らかな異常を認める。染色体は46,XXで内分泌学的検査では異常を認めない。

    【OHVIRA症候群】

    完全閉塞型(Rockの分類A型)が半数以上を占め,左右の子宮は交通を持たないため,初経から進行性で重度の月経痛や下腹部痛を認める。不完全閉塞型のうち対側腟と交通するB型は,月経痛は軽度で,腟壁より膿流出を認める。対側子宮と交通するC型は,頻度は低く,月経痛は軽度で膿性帯下が多い特徴がある。骨盤MRIが有用で,重複子宮,片側の腟留血腫・子宮留血腫・卵管留血腫を認めることが多い。病理組織学的に閉鎖・非閉鎖側の両方の腟壁に重層扁平上皮を認めた場合はOHVIRA症候群と確定的に診断される。

    【HWW症候群】

    初経後に,徐々に増悪する下腹部痛や下腹部腫瘤を認めることが多い。発熱や膿性帯下を訴えることもあるが,見かけ上の月経は認めるため診断は容易ではない。腹部CTで片側腎無形成,骨盤MRIで重複子宮・腟および片側腟閉鎖による子宮留血腫などが認められる。

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