一般に乳汁が出るのは妊娠中,あるいは分娩後であるが,そのような時期以外に乳汁の漏出を認め,無月経を伴うものを無月経・乳汁漏出症候群と言う。何らかの原因による高プロラクチン(prolactin:PRL)血症に起因することが多い。
乳汁漏出と無月経を認めた場合には,血中PRL値測定を行う。血中PRL値は生理的影響を受けやすく,また月経周期内でも変動があるため,血液検査は卵胞期初期で,起床数時間後の食前に行うことが推奨されている。高PRL血症と診断された場合は,その原因となる疾患の有無について精査を行う。
まずは,高PRL血症の原因となる薬剤服用の有無を確認する。PRLは視床下部からのPRL放出抑制因子(PRL inhibiting factor:PIF)によって抑制的に調節されている。ドパミンはPIFの主要な物質であるので,ドパミンの作用に拮抗する薬剤や,ドパミンの合成を抑制するような薬剤は高PRL血症を起こす可能性がある。定型抗精神病薬,血圧降下薬,抗潰瘍薬の一部がこれにあたる。また,原発性甲状腺機能低下症では甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)分泌の増加により高PRL血症をきたす。free T3/T4,甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定し,甲状腺機能低下症の有無を調べる。
上記が否定された場合は,プロラクチノーマの有無を精査することが重要である。特にPRL値が100ng/mL以上の場合には,頭部MRI撮影を行い下垂体腫瘍の存在を検索し,プロラクチノーマの有無を精査するのが望ましい。プロラクチノーマは,サイズにより1cm未満のミクロプロラクチノーマと1cm以上のマクロプロラクチノーマに分類される。血中PRL値は,腫瘍サイズに相関するとされており,ミクロプロラクチノーマでは血中PRL値は200ng/mL以下,マクロプロラクチノーマでは200ng/mL超となることが多い。
上記以外にも視床下部・下垂体茎病変,慢性腎不全などでも高PRL血症をきたす可能性がある。これらの可能性が除外され原因を特定できない場合,機能性高PRL血症と診断する。妊娠,分娩歴のあるものはChiari-Frommel症候群,ないものはArgonz-del Castillo症候群と呼ばれている。
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