卵巣囊腫とは,卵巣腫瘍のうち内容を液体成分が占める良性の囊胞性病変を指す。漿液性・粘液性・成熟囊胞性奇形腫などがあるほか,腫瘍様病変として内膜症性囊胞・卵胞囊胞・黄体囊胞などがあり広義の卵巣囊腫に含まれる。
無症状であることが多く,経腟超音波検査やMRIなど画像検査が重要である。特に経腟超音波検査による良性・悪性の正診率は90%程度とされ費用対効果に優れており,まず行う検査として有用である。卵巣囊腫の場合は,経腟超音波検査で卵巣に囊胞性病変を認める。内腔に充実性部分を認める場合は,境界悪性腫瘍や悪性腫瘍の可能性があるため要注意であり,正確な腫瘍の性質の評価のため造影MRIを行う。診断の補助として腫瘍マーカーが有用であるが,確定診断には手術による摘出が必要となる。
画像検査等により境界悪性腫瘍,悪性腫瘍が否定できた卵巣囊腫には,①経過観察,②薬物療法,③手術療法の選択肢があるが,薬物療法が有効な卵巣子宮内膜症性囊胞と,それ以外の良性卵巣囊腫をわけて管理する。
月経困難症・性交痛・慢性骨盤痛などの症状がある場合は,薬物療法(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬,ジエノゲスト,ジドロゲステロン,GnRHアゴニスト・GnRHアンタゴニスト)により症状改善や腫瘍縮小効果が期待できる。40歳以上では悪性転化の頻度が高まるほか,長径10cm以上や囊胞の急速な増大を認めた場合は,無症状であったとしても手術療法を考慮する1)。不妊症の症状がある場合は,年齢や卵巣予備能を考慮して手術適応を決定する。
症状がなく,捻転・破裂のリスクや悪性化のリスクが低い場合は経過観察となる。基本的に薬物療法が無効のため,サイズが6cm以上の場合は捻転の頻度が上がることから手術療法を考慮する2)。
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