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子宮付属器炎:骨盤内炎症性疾患[私の治療]

No.5236 (2024年08月31日発行) P.52

島 一晃 (中津市立中津市民病院産婦人科)

小林栄仁 (大分大学医学部産科婦人科学講座教授)

登録日: 2024-09-03

最終更新日: 2024-08-27

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  • 子宮付属器炎は,主に細菌感染によって引き起こされる婦人科骨盤内炎症性疾患(pelvic inflammatory disease:PID)のひとつである。多くが細菌性腟症,子宮頸管炎,人工妊娠中絶術・避妊リング挿入などの医原性感染などに起因する上行性感染である。虫垂炎や結核性腹膜炎からの炎症波及による下行性感染で発症することもある。起炎菌は大腸菌やブドウ球菌などの好気性菌のほか,Bacteroides,Peptostreptococcusなどの嫌気性菌が多い。性感染症であるクラミジアや淋菌も原因となる。

    ▶診断のポイント

    婦人科基礎疾患や子宮内操作歴を背景とした下腹部痛と発熱があれば積極的に疑うが,消化器疾患・泌尿器疾患などを除外した上で診断に至ることも多い。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方1)

    鑑別診断として虫垂炎や胃腸炎,異所性妊娠,卵巣腫瘍の捻転や破裂,骨盤内出血,子宮内膜症などに留意する必要がある。また,子宮内避妊器具の長期留置による放線菌感染にも注意を要する。

    子宮付属器炎を含むPIDは,不妊症や異所性妊娠などの深刻な後遺症の原因となるため,早期の診断・治療開始が必要である。

    起因菌が同定されていない初期治療では,患者ごとに問診や診察,検査所見から起因菌を推定し,適応となる抗菌薬を検討する。起因菌同定のため,治療開始前に腟・子宮頸管の粘液培養検査を施行する。高熱あるいは高度の炎症所見を認めるなど敗血症を疑う場合は血液培養検査,尿路感染症も除外できない場合は尿培養検査も施行する。

    軽症の症例は,外来における抗菌薬治療が可能である。重症の症例のほか,虫垂炎などの外科的な緊急疾患を除外できない場合や,妊婦,子宮付属器膿瘍を疑う症例などは入院適応である。

    クラミジアの関与が否定できない場合は,ニューキノロン系やアジスロマイシンを選択する。嫌気性菌を疑う場合は,メトロニダゾールを併用することもできる。

    経腟超音波やCT・MRIで子宮付属器膿瘍の合併を認める場合は,経腟的ドレナージ,CTガイド下ドレナージ,開腹ないし腹腔鏡手術による排膿術といった外科的処置が必要となることもある。

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