「肥満」とは,脂肪組織が過剰に蓄積した状態であり,日本では体格指数(body mass index:BMI)つまり体重(kg)/身長(m)2が25以上の場合と定義される。このうち「肥満症」は,肥満に起因あるいは関連して発症する健康障害を伴う疾患であり,医学的な見地から減量が必要となる。なお,BMIが35以上で健康障害を有する場合を「高度肥満症」と呼び,より専門的な診療を必要とする場合が多い。
肥満症の診断にあたっては,単に「太っている」からでなく,「体重を減らすことにメリットがある」人を選び出すという視点が重要である。
肥満症の診断に必須な健康障害には,耐糖能障害,脂質異常症,高尿酸血症・痛風,冠動脈疾患,脳梗塞,脂肪肝(NAFLD),月経異常・妊娠合併症,睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群(SAS),運動器疾患,肥満関連腎臓病という10カテゴリーが含まれる。これらの多くは,内臓脂肪の過剰蓄積がその病態に関連する。
肥満症治療の目標は,減量を通じて肥満に伴う健康障害を解消あるいは軽減,予防することにある。体重を3%前後減少させることで血中脂質や血糖,血圧,肝機能を有意に改善しうる。このため日常診療では,治療前の体重やウエスト周囲長から3%,BMI 35以上の高度肥満症の場合には,治療前の体重から5~10%以上の減少を目標とする。
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