株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

顕微鏡的大腸炎[私の治療]

No.5110 (2022年04月02日発行) P.39

高橋純一 (東京医科歯科大学消化器内科)

岡本隆一 (東京医科歯科大学消化器内科教授)

登録日: 2022-04-01

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 顕微鏡的大腸炎(microscopic colitis)とは,慢性の水様性下痢を主訴とし,病理組織学的評価にて特徴的な炎症所見を認める疾患である。従来は内視鏡的には明らかな異常所見を認めないとされていたが,特徴的な肉眼所見が近年報告されつつある。
    本疾患は主にリンパ球浸潤大腸炎(lymphocytic colitis)と膠原線維性大腸炎(collagenous colitis)に分類される。リンパ球浸潤大腸炎は上皮内リンパ球の増加(「20細胞/100上皮細胞」以上)を,膠原線維性大腸炎はリンパ球増加に加えて上皮直下の10μm以上に肥厚した膠原線維帯(collagen band)の存在を特徴とする。わが国では薬剤関連性であることが多く,プロトンポンプ阻害薬(PPI)や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を筆頭に,複数の薬剤が原因として報告されている。60歳以上に発症のピークがある。

    ▶診断のポイント

    慢性の非血性水様性下痢を主訴とし,時に体重減少や腹痛を伴う。夜間排便や便失禁のエピソードは過敏性腸症候群(IBS)では稀であり,本疾患を疑う上で有用な情報である。PPIやNSAIDsは発症の危険因子となるので,内服歴の確認は必須である。慢性下痢の精査目的の一環として下部消化管内視鏡検査を実施する。時に縦走潰瘍や粘膜裂創(cat scratch),粘膜の顆粒状変化,粘膜浮腫,血管増生,発赤等を認めることがあるが,異常所見を認めない症例も少なくなく,肉眼所見の有無にかかわらず生検を行い,病理学的評価を行うことが診断につながる。collagen bandは直腸粘膜では証明が困難なことがあり,深部結腸を含む複数箇所からの生検を行うことが望ましい。

    残り1,318文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top