これからの日本には創薬と医療機器の開発が求められており,診療に有用な臨床研究が要請され,基礎医学でも実用化できる研究が求められている。臨床研究は新しい診療技術を生み出すものであり,日常診療の中での実施が必須である。
健常人における薬物動態の検討の多くは専門の受託医療機関で実施されるが,病態時の薬物動態,POC試験を含めて,Phase 1b以後の臨床試験は,診断と治療に精通しunmet medical needsを把握している医師の貢献があって初めて可能となる1)。日本では明治以来,基礎医学に重点が置かれ,臨床試験はアカデミアの業務として必ずしも重点が置かれてこなかった2)。このため,日本の多くの製薬会社は臨床試験を海外で実施し,開発が成功すると,日本でも確認試験を実施してきた3)。大学病院に勤務する医師であっても,治療薬は会社がつくり,完成したものが自分の手元に届けられるべき,と考えている医師は少なくない。
医療の現場では地域医療が常に話題となる。安心して過ごせる医療の提供は最重要事項である。ただ,現在の日本では,ほとんどの地域で1時間以内に基幹病院へ到着できており,世界的にみると恵まれている。医療の現場では目の前の患者に適切に対応できるかが常に問われており,医学教育の基本である。しかし,同時に医療を世界的な視野からとらえて自分の役割を考える教育が必要と感じている。
【文献】
1) 野元正弘:臨薬理. 2007;38(2):69-71.
2) 城戸秀倫, 他:慈恵医大誌. 2004;119(4):279-85.
3) 野元正弘:医界新聞. 2012;3004:4.
【解説】
野元正弘 愛媛大学薬物療法・神経内科教授