【血清尿酸値や合併症の有無に基づき,最新版のガイドラインに即して標準的な診療を提供する】
痛風は経年的に増加し,2019年時点でわが国には125万人の患者がおり(厚生労働省・国民生活基礎調査),また,その原因である高尿酸血症患者は1000万人に上ります。“ありふれた生活習慣病”である高尿酸血症・痛風の患者には,『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版』1)に即した標準的な診療を提供する必要があります。
高尿酸血症の診断基準は,“血清尿酸値7.0mg/dLを超える”と定義されています。高尿酸血症があって,主に下肢の非対称性単関節炎があれば痛風を疑います。リウマチ性疾患などと鑑別するために,痛風の分類基準である表1 2)を使用すると,点数化されますので便利です。
ガイドラインのアルゴリズムには,合併症の有無に基づいたクリニカルクエスチョン(CQ)と推奨文が示されていますので,参考にして下さい(図1)1)。
痛風関節炎の治療は,まず,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drug:NSAID),コルヒチン,ステロイドのどれかを用いて,炎症を抑えます。そして炎症の収束後に尿酸降下薬を用いて,必要ならコルヒチンを併用(コルヒチンカバー)しながら,1.0mg/dL/月以内の尿酸降下速度で,血清尿酸値6.0mg/dL以下(痛風結節では5.0mg/dL以下)をめざします(CQ1,4,6)。無症候性高尿酸血症では,合併症があれば血清尿酸値8.0mg/dL以上から,合併症がなければ9.0mg/dL以上から,尿酸降下薬を用いて血清尿酸値6.0mg/dL以下にコントロールします(CQ2,3,5)。特に腎障害合併高尿酸血症では,腎保護を目的とした尿酸降下薬の投与を,条件付きですが推奨しています。
尿酸降下薬を選択するために,高尿酸血症の病型を決めます。高尿酸血症は「尿酸産生過剰型(プリン体からの尿酸合成促進)」,「尿酸排泄低下型(腎臓からの尿酸排泄低下)」,「腎外排泄低下型(小腸からの尿酸の便中排泄低下)」の3病型があります。随時尿を用いて尿中尿酸値/尿中クレアチニン値比を測定し,0.5以上であれば腎負荷型(尿酸産生過剰型および腎外排泄低下型)と診断して尿酸生成抑制薬を,その比が0.5未満であれば尿酸排泄低下型と診断して尿酸排泄促進薬を使用します。
尿酸生成抑制薬にはプリン骨格を有するアロプリノールまたは非プリン骨格のフェブキソスタットならびにトピロキソスタットが,尿酸排泄促進薬には選択的尿酸再吸収阻害薬ドチヌラドまたは非選択的尿酸再吸収阻害薬ベンズブロマロンならびにプロベネシドなどがありますので,少量から漸増して使用して下さい3)。また,尿pHが6.0未満の方に尿酸排泄促進薬を使用する場合は,初期3カ月間は尿アルカリ化薬と併用することを勧めます。
まずは,3%の体重減少をめざしたカロリー制限と,アルコール制限が基本です。食材では,プリン体の多い食材に偏らないよう,尿酸値の低下作用が知られる乳製品を摂取することを推奨します(CQ7)。サプリメントにはDNA/RNAが大量に含まれているものがありますので,ご注意下さい。無酸素運動は筋肉での尿酸前駆物質を増やして高尿酸血症を起こすので,有酸素運動を勧めます。また,水分摂取の励行もお願いします。
【文献】
1)日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会, 編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン. 第3版. 診断と治療社, 2018.
2)Neogi T, et al:Ann Rheum Dis. 2015;74(10): 1789-98.
3)日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会, 編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン. 第3版[2022年追補版]. 診断と治療社, 2022.
【回答者】
久留一郎 国立病院機構米子医療センター病院長