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虚血性腸管障害(虚血性大腸炎を除く)[私の治療]

No.5120 (2022年06月11日発行) P.41

中島勇貴 (福島県立医科大学会津医療センター小腸・大腸・肛門科学講座)

歌野健一 (福島県立医科大学会津医療センター臨床医学部門放射線科教授)

冨樫一智 (冨樫一智(福島県立医科大学会津医療センター小腸・大腸・肛門科学講座教授)

登録日: 2022-06-13

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  • 虚血性腸管障害とは,血流障害が主因となって腸管に炎症を生じる疾患の総称である。その原因は全身の循環障害,腸間膜血管の障害,腸管壁の血行障害に至るまで,多くの病態が関与する。そのため,虚血性腸管障害には,虚血の程度や持続時間,側副血行路の有無や形成の程度,当該腸管壁の状態などにより,一過性のものから広範な梗塞を生じる重篤な病態のものまで存在する。

    ▶診断のポイント

    虚血性腸管障害は,症状の経過によって急性腸間膜虚血と慢性腸間膜虚血に分類できる。急性腸間膜虚血は,動脈流入量の減少による小腸の低灌流が原因となって発症し,上腸間膜動脈を中心とした腸管血流の塞栓が原因となる急性腸間膜動脈閉塞と,非閉塞性の動脈血流低下が原因となる非閉塞性腸間膜虚血(non-occlusive mesenteric ischemia:NOMI)がある。慢性腸間膜虚血は,複数の主幹動脈(腹腔動脈・上下腸管膜動脈)に及ぶ腸間膜血管の狭窄または閉塞により生じる,小腸の一過性または恒常的な低灌流が原因となる。

    症状は,主に腹痛や嘔吐,血便であり,腸管壊死に至ると汎発性腹膜炎をきたし,腹膜刺激徴候が出現する。

    急性腸間膜虚血は早期診断が重要であり,臨床経過や臨床検査所見,血管造影も含めた画像所見から,腸管虚血の可能性を想起できるかがポイントとなる。最近では,緊急に行われる検査であるため,血管造影検査に代わって腹部造影CT検査が行われる。

    虚血性腸管障害に特異的な症状や検査所見はないが,急性発症の腹痛や代謝性アシドーシスの存在などがある場合には,腸管虚血の可能性を考えなければならない。特に発症初期は,疼痛は強いが身体所見に乏しいことが多いので,注意を要する。

    NOMIは,臨床的に強く疑う危険因子,すなわち低心拍出量や不整脈,心血管疾患などの有無が重要となる。腹部造影CT検査で,急性腸間膜動脈閉塞や腸間膜静脈血栓症などが除外され,特徴的な血管攣縮像により診断される。腎機能の低下などのために,造影検査ができない場合にはカラードプラエコー検査を考慮する。

    慢性腸間膜虚血は,ほとんどの場合が無症状であるが,食後の急激な腹痛(いわゆる腹部アンギーナ)や体重減少を訴えることがある。しかし,わが国では稀である。診断は,血管造影を伴う画像検査で腸間膜動脈の狭窄の有無を検索する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    可能な限り迅速に腸管血流を回復させることが治療目標となる。

    臨床評価と画像検査による血流の評価(閉塞の病因と部位)により,外科的治療,血管内治療,内科的治療から最適な治療法を選択する。

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