【質問者】
南 昌江 南昌江内科クリニック院長
【移植法の選択やインスリン・デバイスの進歩により今後の対応が変わる】
重症1型糖尿病に対する移植医療は,臓器移植として実施される膵移植(膵臓移植)と膵臓から膵島(ランゲルハンス氏島)のみを分離し,局所麻酔下に門脈内に点滴の要領で組織移植として実施される膵島移植とがあります。
膵移植はわが国で2000~20年までに465例実施された実績のある移植医療で,膵腎同時移植,腎移植後膵臓移植,膵臓単独移植の術式があります。近年では主に腎不全に陥った糖尿病患者に対して脳死ドナーからの膵腎同時移植が行われています。3術式合わせた移植後膵臓の1年,3年,5年生着率はそれぞれ85.6%,80.3%,76.5%です。
膵島移植は,わが国で2004年に初めて実施され,2019年12月までに28症例に対して行われました。2012年より先進医療で行った新規免疫抑制薬プロトコルを用いた移植成績では,中間報告で有効性が認められ,2020年4月には膵島移植が保険収載となり現在に至ります。先進医療での膵島生着は膵単独移植と同等の成績でした。膵島移植は低侵襲で一度の移植で低血糖発作やquality of lifeが改善します。また,初回移植から早期に2回目,3回目の移植を行うことでインスリン離脱する可能性が高くなります。一方,膵移植ではインスリン離脱は可能ですが,高侵襲で重篤な合併症が起こることがあり,移植した膵臓の摘出などの再手術が必要となる場合もあります。加えて,移植臓器廃絶時は摘出・再移植を行わなければ免疫抑制薬を服用し続ける必要がありますが,膵島移植では機能廃絶時もさらに移植を行わなければ免疫抑制薬を服用する必要はありません。
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