株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

胃前庭部毛細血管拡張症[私の治療]

No.5124 (2022年07月09日発行) P.47

貝瀬 満 (日本医科大学消化器内科学特任教授)

登録日: 2022-07-11

最終更新日: 2022-07-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 胃前庭部毛細血管拡張症(gastric antral vascular ectasia:GAVE)は,前庭部に拡張した毛細血管が集簇する疾患である。拡張毛細血管が放射状縦走性分布するwatermelon stomach(図1a)と,びまん性に分布するdiffuse antral vascular ectasia(DAVE)(図1b)の2病型があるが,病態に大きな差異はない。肝硬変,慢性腎不全,強皮症,造血細胞移植後などの基礎疾患を有することが多い。
    病因として門脈圧亢進,腎不全,高ガストリン血症,胃蠕動亢進などの関与が推定されている。また,エベロリムス,イマチニブといった薬剤誘発GAVEも報告されている。

    ▶診断のポイント

    消化管出血症状がない鉄欠乏性貧血を呈することが多いが,無痛性の黒色便,吐下血を呈することもある。

    内視鏡でwatermelon stomachやDAVEがみられれば,診断は容易である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【治療適応】

    GAVEがあっても,消化管出血や貧血を呈さなければ治療対象にはならない。消化管出血や貧血症例で,GAVEからのoozingが内視鏡で確認できれば治療適応となる(図1b)。ほかに出血源がない消化管出血例では,oozingが確認されていないGAVEであっても相対的な治療適応となる。

     

    【治療法の組み立て】

    内視鏡的電気凝固法などで拡張毛細血管を焼灼し,GAVEを消滅させることが治療の基本である(図2)。GAVEは広範囲なため,アルゴンプラズマ凝固法(argon plasma coagulation:APC)の有効性が高い。

    プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-cab)などの酸分泌抑制薬や粘膜保護薬の投与は補助的治療となる。併用する抗血栓薬やNSAIDsは出血リスクを高めるため,可能な場合は薬剤中止・休薬を図る。

    残り1,035文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top