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【LGBTQの人々と医療】性の多様性の基礎知識─SOGIを切り口に人間のありようをとらえ直す[プライマリ・ケアの理論と実践(148)]

No.5124 (2022年07月09日発行) P.12

金久保祐介 (一般社団法人にじいろドクターズ理事)

登録日: 2022-07-07

最終更新日: 2022-07-06

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SUMMARY
医療現場に限らず多くの場面で性別二元論や異性愛規範が前提とされる現状があるが,実際には性のあり方は多様であり,それぞれが尊重されるべきものである。性の多様性に密接に関連した健康問題も数多く,研究分野としても実臨床としても重要なテーマである。

KEYWORD
SOGI(ソジ)
性的指向や性自認は,すべての人間に関わる根源的な概念である。あらゆる性的指向・性自認は人権の観点から保障されなければならない。SOGIに関連して医療現場で生じる問題に着目し,学びを深めていきたい。

金久保祐介(一般社団法人にじいろドクターズ理事)

PROFILE
東京大学医学部卒業後,亀田ファミリークリニック館山にて家庭医療の研鑽を積む。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・指導医。同学会ダイバシティ推進委員・セクシュアルヘルス委員,ならびに千葉県医師会男女共同参画推進委員を兼務。

POLICY・座右の銘
巨人の肩の上に立つ

1 性別二元論とジェンダー

現代の日本においては,医療現場での実践のみならず,各種調査・研究,ひいては日常生活における様々な場面に性別二元論,異性愛規範が浸透している。しかし,性のあり方は「男」か「女」かといった単純な二元論に還元されるものではない。本稿では二元論的な見方からの脱却をめざし,スペクトラムたる多様な性のあり方について学びほぐしてみたい(図1のように直線的なスペクトラムでとらえる見方のほかに,男性・女性を2軸とした原点0を持つ平面でとらえる見方などもある)。

それに先立ち,まずジェンダーの概念につき整理しておきたい。ジェンダー概念は,①性別そのもの(男女の区別自体),②性差(男女間の違いの中で,統計学的現象として「〜である」という事実命題として語られるもの),③性役割(男女間の違いの中で,「〜べきである」という規範命題として語られるもの)の3層からなる1)。性差はあくまで集団を記述するものであり,個人を語るものではないことと,性差は性役割を正当化する根拠にはならないことを強調しておきたい1)

たとえば,「子どもを産むのは女性なのだから,女性が育児をすべきだ」という主張については,当然子どもを産まない女性もいるし,加えて育児も男性が,あるいは両性が協力して行ってはいけない理由などない。それでも社会は「男は〜」「女は〜」といった規範を強要するまなざしと権力装置で溢れている。








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