【質問者】
寺師浩人 神戸大学医学部附属病院形成外科教授
糖尿病性足潰瘍の治療において末梢神経障害は大きな問題です。感覚神経障害によって足部の痛みが感じられないために靴擦れや潰瘍を形成しても気づかないのはもちろんのこと,運動神経障害によって足趾の変形が引き起こされ,自律神経障害によって皮膚が乾燥してしまいます。
末梢神経障害に伴うこれらのリスクを有する患者では,日常的に行う歩行という行動自体が潰瘍発生の原因となるため,積極的に潰瘍の発生を予防する必要があります。血行障害や感染をコントロールし潰瘍がやっと治癒に至ったとしても,これらの患者では再発のリスクが非常に高く,これを予防するためにも足趾の変形を修正する予防的手術が治療の選択肢に挙げられます。
糖尿病患者に発生する代表的な足趾変形としてhammer toe(槌趾),claw toe(鉤趾)変形があります。これらに伴う足趾潰瘍,胼胝に対して2015年の糖尿病足病変に対する国際ワーキンググループ(International Working Group on the Diabetic Foot:IWGDF)ガイドラインでは,発生予防のために屈筋腱切断術を行うことを推奨しています。また,糖尿病に伴うアキレス腱短縮による足関節の背屈可動域制限によって起こる足底潰瘍に対してはアキレス腱延長術,関節の変形や骨突出による足底潰瘍に対しては関節形成や中足骨骨頭切除,骨突出切除などを再発予防のために行うことを推奨しています。
残り532文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する