胸やけ症状が胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)の定型症状であることは言うまでもないが,胸やけを有する患者に対して,上部消化管内視鏡検査を施行しても粘膜傷害,すなわち,びらん性GERDが認められるのは30%程度である。では,粘膜傷害を認めないにもかかわらず,胸やけ症状を訴えるのはどのような患者であろうか?
このような患者には,非びらん性GERD(non-erosive reflux disease:NERD)や機能性胸やけ,過敏性食道などが含まれている。これら疾患群を鑑別するためには,酸,非酸,空気の逆流を検知できる24時間インピーダンス・pHモニタリングや食道運動機能検査(食道内圧検査および食道造影検査)を行うとよい。
2016年5月に機能性消化管障害の診断基準であるRome基準がRome Ⅳに改訂された。その中の機能性食道障害では,従来からの機能性胸痛,機能性胸やけに加え,新たに逆流性過敏(reflux hypersensitivity)といった概念が提唱された1)。この逆流性過敏は,異常な胃食道逆流はないものの,症状が生理的な範囲の逆流と関連する群である。これら疾患を鑑別することは,その後に行う治療法選択に影響するため重要である。すなわち,酸分泌抑制薬が効果を示すのは,GERD/NERDによる症状であり,機能性胸やけでは酸分泌抑制薬の効果が期待できない。
【文献】
1) Aziz Q, et al:Gastroenterology. 2016 Feb 15. [Epub ahead of print]
【解説】
1)大島忠之,2)三輪洋人 兵庫医科大学内科学消化管科 1)准教授,2)主任教授