転移性肺腫瘍は全身の各臓器の原発性悪性腫瘍が肺に転移した腫瘍である。転移経路としては血行性,リンパ行性や経気道性があるが,一般的に血行性が最も多い。治療の原則は原疾患に対する全身治療であり,局所療法の適否については症例ごとの検討になることが多い。
一般的に自覚症状のないことが多く,原疾患の経過観察中に胸部単純X線や胸部CT,PET-CTなどで偶発的に異常影を指摘されることが多い。異常影は原発性肺癌と比較して類円形で辺縁が整うことが多い。進行した場合は,転移した肺腫瘍の増大によって咳嗽や血痰,発熱,胸痛などの症状を呈してくる。乳癌や甲状腺癌,腎癌,悪性黒色腫,絨毛癌などでは原発性悪性腫瘍の治療後10年以上経過した後に肺に転移をきたす場合があるため,画像診断のみならず悪性腫瘍の既往を確認することは重要である。
画像上単発の結節・腫瘤であった場合は,肺原発か転移なのかの鑑別は治療方針を考える上できわめて重要であり,病理学的検査が必要となる場合がある。転移性肺腫瘍の多くは血行性転移のため病変への関与気管支のない場合が多く,気管支鏡などの経気管支的アプローチでは診断困難なことも多い。CTガイド下経皮生検によって病理学的な確定診断を得て治療方針を決定する。臨床所見上,転移性肺腫瘍として矛盾しないと考えられる場合は,原疾患の全身薬物療法を優先する。
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