ファブリー病は,ライソゾームに存在する酵素であるαガラクトシダーゼA(α- galactosidase A:GLA)をコードするGLA遺伝子の変異により,GLA活性が先天的に欠損もしくは低下し,酵素の基質であるスフィンゴ糖脂質が細胞内に沈着し,臓器障害を発症するX連鎖性遺伝性疾患である。酵素活性低下の程度により,若年から全身の症状を認める古典型(classic type)と,主に成人してから臓器障害を認める遅発型(late onset type),女性ヘテロ型にわけられる。
古典型では,小児期より四肢末端痛や低・無汗症,被角血管腫などが出現し,成人になって腎障害や心病変を認める。遅発型では,腎亜型と心亜型にわけられる。前者では主に腎障害のみが出現し最終的には腎不全に,心亜型(心ファブリー病)では心肥大を認め,心不全や不整脈を認める。肥大型心筋症を疑う男性患者の1~3%程度に心ファブリー病が潜んでいる。
鑑別のポイントは,心エコーによる心肥大の様式が非対称性よりは全周性肥大が多いことであるが,最も重要なことは,心肥大を診たときに本症の可能性を考えることである。男性であれば血中GLAの酵素活性の低下(正常の10%以下)を認めれば本症の診断となる。女性ヘテロ型では,酵素活性は様々であり,正常下限よりもやや低値か正常範囲内にあることが多い。よって女性ヘテロ型の診断は酵素活性測定によっては困難であり,遺伝子診断が必要である。本症に対する遺伝子検査は保険収載されている。
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