原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)は,副腎皮質からのアルドステロン分泌過剰により高血圧を呈する疾患である。内分泌性高血圧の中では最も頻度が高く,高血圧症の約5~10%を占めるとされている。本態性高血圧と比較して心血管イベント,腎合併症,心房細動などのリスクが高いことがわかっており,早期診断および治療が重要である。
診断においては積極的なスクリーニング検査が重要である。「高血圧治療ガイドライン2019」1)において,スクリーニング検査が推奨されるPA有病率の高い疾患群として,①低カリウム血症(利尿薬誘発性も含む)合併高血圧,②若年者の高血圧,③Ⅱ度以上の高血圧,④治療抵抗性高血圧,⑤副腎偶発腫瘍を伴う高血圧,⑥若年の脳血管障害合併例,⑦睡眠時無呼吸を伴う高血圧,が挙げられる2)。スクリーニング検査では,早朝に血漿レニン活性(plasma renin activity:PRA)もしくは活性型レニン濃度(active renin concentration:ARC)および血漿アルドステロン濃度(plasma aldosterone concentration:PAC)を同時に測定する。
降圧薬はホルモン値に影響を与えることより,検査の際には影響の少ないCa拮抗薬もしくはα遮断薬への変更が推奨されるが,血圧コントロール困難な症例では変更は行わず,薬剤の影響を考慮した上でスクリーニング検査を実施する。スクリーニング陽性例においては,機能確認検査(カプトプリル負荷試験,フロセミド立位試験,経口食塩負荷試験,生理食塩水負荷試験)を実施し,1つ以上陽性であればPAの診断が確定する。
PA診断において重要なPACはこれまでラジオイムノアッセイ法を中心に測定されていたが,2021年3月に測定キットが供給停止となり,4月以降は新たな検査法としてサンドイッチ法を用いた化学発光酵素免疫測定法が用いられている。検査法の変更によりPACは従来と比較して低値を示すことがわかっており3),日本内分泌学会より「原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021」4)が発表された。新ガイドラインにおいて,PAC/PRA≧100 (もしくはPAC/ARC≧20)かつPAC≧60pg/mLが暫定的なスクリーニング陽性のカットオフ値に設定された。併せて機能確認検査のカットオフ値の変更も行われている。
PAにおけるサブタイプとして,アルドステロン産生腺腫と過形成による特発性アルドステロン症がある。CT検査による副腎腫瘍の評価および手術を検討する場合には,局在診断のため,原則として選択的副腎静脈サンプリングの実施が推奨される。
残り1,013文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する