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グルカゴンと糖尿病の新知見について

No.5138 (2022年10月15日発行) P.57

松久宗英 (徳島大学先端酵素学研究所 糖尿病臨床・研究開発センター センター長)

北村忠弘 (群馬大学生体調節研究所 代謝シグナル解析分野教授)

登録日: 2022-10-13

最終更新日: 2022-10-11

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  • 正確なグルカゴン測定法がもたらした最新の糖尿病の病態を教えて下さい。
    群馬大学生体調節研究所・北村忠弘先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    松久宗英 徳島大学先端酵素学研究所 糖尿病臨床・研究開発センター センター長


    【回答】

    【正確なグルカゴン測定法により,2型糖尿病におけるグルカゴン分泌異常が明らかとなった】

    糖尿病と関連するホルモンの代表はインスリンですが,最近ではグルカゴンに注目が集まっています。グルカゴンは血中に存在するグルカゴン関連ペプチドとの交差反応性により,従来使用してきた競合法RIA(radioimmunoassay)では血中濃度を正確に測定できていませんでした。そこで最近,グルカゴンのN末端とC末端を認識する2つの抗体を用いたサンドイッチELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)が開発されました。筆者らは質量分析装置を用いた高特異性のグルカゴン測定系〔液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-MS/MS)〕との比較検証を行い,サンドイッチELISAが競合法RIAよりも格段に正確であることを証明しました。

    次に,健常者(CONT)と2型糖尿病患者(T2DM)の血中グルカゴン濃度をサンドイッチELISAで比較検討したところ,T2DMはCONTに比べ,①空腹時の高グルカゴン血症,②糖負荷後30分のグルカゴンが低下しないこと,③食事負荷後30分のグルカゴンが著明に上昇すること,が判明しました。さらに,T2DMにおけるグルカゴン分泌異常はインスリンやインクレチンの分泌とは関連していないことが明らかになりました。したがって,2型糖尿病の病態診断にグルカゴンが独立したマーカーとなりうることが示唆されました。

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