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糖尿病における高血糖緊急症(糖尿病性ケトアシドーシス,高浸透圧高血糖状態,乳酸アシドーシス)[私の治療]

No.5141 (2022年11月05日発行) P.40

吉岡成人 (NTT東日本札幌病院糖尿病内分泌内科/病院長)

登録日: 2022-11-06

最終更新日: 2022-11-01

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  • Ⅰ.糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis:DKA)

    インスリンの極端な欠乏とインスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン,コルチゾールなどの過剰によってもたらされる病態である。高血糖,高ケトン血症,アシドーシスと脱水をきたす。向精神薬〔セロクエル(クエチアピンフマル酸塩)〕などの薬剤の投与が発症の契機となることもある。SGLT2阻害薬を使用している患者では,血糖値の著しい上昇を伴わない正常血糖性糖尿病性ケトアシドーシス(euglycemic DKA)を呈することがある。

    ▶診断のポイント

    数日の経過での急激な口渇,多飲,多尿,倦怠感,腹痛,嘔気などの症状を主訴とする。代謝性アシドーシスを補正するための過呼吸(Kussmaul呼吸),呼気のアセトン臭,口腔粘膜の乾燥,低血圧,頻脈などを認める。検査所見として高血糖(≧250mg/dL),高ケトン血症(β-ヒドロキシ酪酸の増加),アシドーシス(pH<7.30,HCO3<18mEq/L)を認める。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療の基本は生理食塩水を中心とした十分な補液と,インスリンの持続静脈内投与である。カリウムの補給も重要であり,血清カリウム濃度を4.0~5.0mEq/Lの範囲に維持する必要がある。DKAにおける重炭酸塩の投与やリンの補充が,生命予後や病態の改善に寄与するというデータはない。

    ▶治療の実際

    一手目 :生理食塩水1回500mL(点滴静注)

    500mL/時の速度で輸液を開始する。脱水が著しく(収縮期血圧80mmHg以下,脈拍120/分以上の頻脈),心機能に問題がない場合は1000mL/時で開始する。次の2時間で1000mL,その後の4時間で1000mLの輸液を行う。心不全の有無に注意して施行する。

    二手目 :〈一手目に追加〉速効型インスリン〔ヒューマリンR注(インスリンヒト)またはノボリンR注(インスリンヒト)〕50単位と生理食塩水500mLを混和し0.1単位/mLの濃度として,0.1単位/kg/時の速度で点滴静注

    点滴の前に,50mL程度をフラッシュする。回路にインスリンの吸着が起こるが,一定量の吸着後は,注入したインスリンの約80%は有効である。血糖値は75~100mg/dL/時の速度で低下する。血糖の低下速度が遅い場合は,点滴の速度を2倍とする。1時間ごとに電解質(血清ナトリウム,カリウム,クロール)を測定し,電解質異常の有無に注意を払う。

    三手目 :〈一手目後の輸液として〉3号液(維持液)製剤〔ソルデム3輸液(ブドウ糖・電解質液)など〕に50%グルコース40mLを添加し,100~150mL/時の速度で点滴静注

    血糖値が250~300mg/dL前後になったら,インスリンは1~2単位/時の速度で投与を継続し,維持液製剤にグルコースを混和して輸液を継続する。

    四手目 :〈血清カリウム濃度が4.5mEq/L以下の場合〉生理食塩水500mLにKCL注10mEqキット「テルモ」(塩化カリウム)2キットを混和し,250mL/時の速度で点滴静注

    点滴速度に注意し,カリウムの補充は20mEq/時を超えない。1日最大投与量は100mEq以下。

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