結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)は,中型動脈を主体として生じる全身性壊死性血管炎で,5年生存率が80%程度と予後不良な疾患である。
わが国の患者数は100万人当たり11.7人,年間の新規発症も100万人当たり0.5人と推定されている希少疾患であり,発症のピークは50歳代,男女比はおよそ3:1である。
以下の主要症候2項目以上と組織所見のある症例が確実例(definite),主要症候2項目以上と血管造影所見の存在する例,主要症候のうち全身症状を含む6項目以上が存在する例が疑い例(probable)となる。
発熱(38℃以上,2週以上)と体重減少(6カ月以内に6kg以上),高血圧,急速に進行する腎不全・腎梗塞,脳出血・脳梗塞,心筋梗塞・虚血性心疾患・心膜炎・心不全,胸膜炎,消化管出血・腸閉塞,多発性単神経炎,皮下結節・皮膚潰瘍・壊疽・紫斑,多関節痛(炎)・筋痛(炎)・筋力低下。
組織所見では中・小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎の存在,血管造影所見では腹部大動脈分枝(特に腎内小動脈)の多発小動脈瘤と狭窄・閉塞。
血管炎を伴わない感染症や悪性腫瘍でもPANに類似した臨床像や炎症反応高値などの血液検査所見を呈することがあるため,組織所見を欠如した疑い例の診断は特に慎重に行う。
主要臓器障害,多臓器障害の有無と活動性の高さ(臓器障害の進行速度,全身症状や血液検査も参考になる)により重症度を決定し,それに応じて副腎皮質ステロイドの投与量,併用する免疫抑制薬や生物学的製剤(ただし,大型血管炎にはトシリズマブ,ANCA関連血管炎にはリツキシマブが保険適用となっているが,PANに保険適用となる生物学的製剤はなく,重症かつ難治例に限定して考慮する)の種類,これらの治療の要否などを決定する。
副腎皮質ステロイドは効果発現が迅速で奏効率が高いために第一選択となるが,特に長期使用で多彩な副作用が高率に認められるために,寛解導入時から免疫抑制薬を併用して再燃に注意しながらも漸減する。免疫抑制薬はエビデンスの豊富なシクロホスファミドが第一選択であり,寛解維持療法では比較的副作用の少ないアザチオプリンに変更する1)。
Ⅰ期(変性期),Ⅱ期(急性炎症期),Ⅲ期(肉芽形成期),Ⅳ期(瘢痕期)という病期があり,Ⅳ期では治療反応性が期待できない。
血管炎全体の予後不良因子として高齢,心症状,消化器病変,腎不全,耳鼻咽喉症状の欠如が挙げられている。
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