肺ランゲルハンス細胞組織球症(pulmonary Langerhans cell histiocytosis:PLCH)は,Langerhans細胞が,肺の間質や気管支周囲に増殖・浸潤し,多発性の結節と囊胞性病変を呈する,慢性進行性の原因不明の稀な疾患である。
かつてLettere-Siwe病,Hand-Schuller-Christian病,好酸球性肉芽腫症とともにhistiocytosis-Xと呼ばれたが,現在ではこれらは独立した疾患と考えられ,好酸球性肉芽腫症をLangerhans細胞組織球症と呼ぶことが一般的である。肺好酸球性肉芽腫症,肺Langerhans細胞肉芽腫症とも呼ばれる1)。
過半数の症例で病変は肺に限局しているが,下垂体,肝臓,皮膚,骨などに病変を認めることがある。20~40歳代の若年者に多く,95%以上に喫煙歴がある。禁煙により改善あるいは進行が止まる症例が多く,禁煙が治療の基本である。
約25%の症例は無症状である。症状は,乾性咳嗽,呼吸困難,胸痛,倦怠感,体重減少,発熱などである。健診による胸部異常陰影などで,偶然に発見されることが多い。合併症として,気胸,喫煙関連間質性肺炎,骨病変,尿崩症,悪性腫瘍などがある。
血液検査では特異的な所見は認めない。胸部X線や胸部CTでは,上肺野優位の粒状,結節,輪状,網状,囊胞状陰影がびまん性に分布する。肺機能検査では,通常は正常であるが,進行すると拡散能低下が認められ,重症例では肺高血圧症が問題となる。気管支肺胞洗浄では,マクロファージ優位の総細胞数増加を認め,CD1a陽性細胞が5%以上認められれば本症が強く疑われる。
確定診断は,胸腔鏡下肺生検やクライオバイオプシーなどによる病理組織診断である。肺胞や細気管支領域に,Langerhans細胞と好酸球やリンパ球を含む肉芽腫を認める。Langerhans細胞は,CD1aやS-100蛋白陽性であり,電子顕微鏡では,細胞質にテニスラケット状のBirbeck顆粒が認められる。また,細気管支領域にstellate fibrosisなどの線維化病変,囊胞形成を認める。
半数以上で,BRAF V600E変異などにより活性型MAPK変異が認められる。
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