No.5147 (2022年12月17日発行) P.14
武田慧里子 (さんむ医療センター総合診療科)
鋪野紀好 (千葉大学大学院医学研究院地域医療教育学特任准教授,千葉大学医学部附属病院総合診療科)
登録日: 2022-12-15
最終更新日: 2022-12-14
SUMMARY
昨今コロナ蔓延期を数年経験し,発熱外来の受診患者も増えている。それに伴い待ち時間が長くなることで患者が怒ってしまうことや,医師の身体的精神的負担も増えている。医療スタッフも懸命に診療しているが陰性感情のコントロール不足により,患者-医師関係が崩れ誤診を招くことは防ぐべきである。そのため,適切な対応技法を実践することは非常に重要である。
KEYWORD
BATHEテクニック1)
患者の様々な背景(Background)と,それに対する感情(Affect)を聞き,その中で最も悩んでいること(Trouble)を抽出させ,どのように対処(Handling)しているのか尋ね,最後にその苦労や努力に対して共感(Empathy)を示すだけのシンプルな面接技法。簡単に実施できて日常臨床上,効率的かつ効果的な治療的対話術である。
PROFILE
千葉大学医学部附属病院総合診療科に入局し,現在さんむ医療センター総合診療科で勤務。大学病院と連携し医学生,初期研修医,また総合診療科専攻医の指導を行う。日本内科学会内科認定医・指導医,日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医。(武田)
POLICY・座右の銘
なんでもやってみる,人生一度きり楽しむ
今回は,「怒っている患者」への対応方法について,事例に基づいて検討していく。
CASE:発熱外来受診
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延期の発熱外来。感染対策のため個人防護具(personal protective equipment:PPE)に身を包みながらの診察。院内での感染拡大防止のため,院外に設置されたコンテナで診療を行う。
患者:50代男性。
主訴:発熱,咳嗽。
現病歴:受診3日前から発熱,咳嗽が出現。発熱が持続するため,かかりつけ医に問い合わせたが,発熱は応需困難とのことで当院発熱外来受診。
既往歴:糖尿病。
内服薬:メトホルミン1500mg/日。
生活:妻と子ども2人と4人暮らし。
職業:会社員(都内まで電車通勤)。
バイタル:体温 38.7℃,脈拍 100回/分,整。血圧 135/78mmHg。呼吸数 19回/分,SpO2 98%(room air)。