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尿酸トランスポーターの最新の知見について

No.5148 (2022年12月24日発行) P.50

久留一郎 (国立病院機構米子医療センター病院長)

登録日: 2022-12-21

最終更新日: 2022-12-20

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尿酸トランスポーターに関する最新の知見についてご教示下さい。(岡山県 T)


【回答】

 【尿酸トランスポーターの制御は,高尿酸血症・痛風,合併する臓器障害の治療に重要である】

尿酸トランスポーターに関する知見を,腎臓並びに腎外臓器との関連からまとめます。

【腎臓と尿酸トランスポーター】

ヒトの腎尿細管において,尿酸は,再吸収と分泌の双方向で輸送が行われています。尿酸は糸球体で100%濾過された後に,約90%が再吸収されます。図1に示すように,親水性の尿酸が細胞を通過するためには,尿細管側と血管側にそれぞれ再吸収と分泌を担う膜輸送蛋白質,すなわち尿酸トランスポーターが必要です1)

近位尿細管では,再吸収のために,尿酸塩がSLC22A12遺伝子にコードされるURAT1を介して内腔膜を越えて細胞に入り,SLC2A9遺伝子にコードされるGLUT9を介して基底膜を越えて血液に移行します。SLC16A9遺伝子にコードされるMCT9は双方向性尿酸トランスポーターであり,血管側への尿酸排泄に関与していると考えられています。

逆に,血液から尿への尿酸塩の分泌では,血管側膜を介した近位尿細管への移動は,SLC22A11遺伝子にコードされるOAT1またはOAT3が行います。尿細管内腔側膜を越えて尿酸を尿細管内腔(尿中)に分泌するのは,SLC17A3遺伝子にコードされるNPT1またはNPT4,ATP(adenosine triphosphate,アデノシン三リン酸)を利用して能動的に尿酸輸送を行うABCC4遺伝子にコードされるMRP4や,ABCG2遺伝子にコードされるBCRP/ABCG2があります。SLC22A13遺伝子にコードされるOAT10は近位尿細管の内腔に強く発現している低親和性の尿酸トランスポーターであり,尿酸を尿中に分泌します。

【腎外臓器の尿酸トランスポーター】

尿酸トランスポーターは腎臓以外の臓器でも尿酸代謝を担っています。ABCG2は,肝臓や腸管では管腔側に存在し,消化管側への尿酸分泌を担っています。GLUT9とGLUT12は肝臓に発現し,前者は胆汁への尿酸の分泌を,後者は血液側から肝臓への尿酸取り込みを担う可能性が示されています2)。これらのトランスポーターの機能異常が,腎外排泄低下型高尿酸血症・痛風の発症に関与しています。

また,最近の研究では,GLUT9,MCT9,ABC G2,MRP4は様々な臓器に共通して発現しており3)4),これらを介して細胞内に取り込まれる尿酸が臓器障害を起こす可能性が示され,尿酸トランスポーターの病態生理学的意義が注目されています。トランスポーター機能のバランスが崩れると細胞内尿酸が増加し,一酸化窒素合成酵素阻害による血管内皮機能障害,Akt活性化による心房不応期短縮,IL-1βなどのサイトカイン産生増加による炎症が起こり,臓器障害が惹起されます。


以上から,尿酸トランスポーターは腎臓ならびに腎外臓器に存在し,尿酸代謝の恒常性を維持します。また,その機能異常は,高尿酸血症・痛風に関与するのみならず,臓器障害にも関与します。ゆえに,尿酸トランスポーターの制御は,高尿酸血症・痛風の治療にとどまらず,合併する臓器障害の治療にも重要であると考えられます5)

【文献】

1)Otani N, et al:Expert Opin Drug Discov. 2020; 15(8):943-54.

2)日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会, 編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版[2022年追補版]. 診断と治療社, 2022.

3)Toyoda Y, et al:Proc Natl Acad Sci U S A. 2020; 117(31):18175-7.

4)Maharani N, et al:Int Heart J. 2016;57(4): 395-9.

5)久留一郎:Dr.ヒサトメのかかりつけ医のための高尿酸血症・痛風診療Q&A. 診断と治療社, 2021.

【回答者】

久留一郎 国立病院機構米子医療センター病院長

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