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重症低血糖に対する点鼻グルカゴン製剤の有用性について

No.5152 (2023年01月21日発行) P.50

北村忠弘 (群馬大学生体調節研究所 代謝シグナル解析分野教授)

西村理明 (東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科教授)

登録日: 2023-01-18

最終更新日: 2023-01-17

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  • 重症低血糖に対する点鼻グルカゴン製剤の有用性についてご教示下さい。
    東京慈恵会医科大学・西村理明先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    北村忠弘 群馬大学生体調節研究所 代謝シグナル解析分野教授


    【回答】

    【低血糖のリスクが高い糖尿病患者に,点鼻グルカゴン製剤の処方を】

    糖尿病の薬物治療において,特に注意すべき急性合併症のひとつが重症低血糖です。重症低血糖は,死に至ることもあるきわめて危険な病態であり,さらに心血管疾患や不整脈,骨折等の外傷,認知症等のリスク上昇とも有意に関連しています1)〜3)

    一般に,低血糖に陥った際には,経口摂取が可能な場合はブドウ糖10~20g,もしくは同量を含む清涼飲料などを可及的速やかに摂取し,血糖値の上昇と自覚症状の改善を確認します。しかし,意識障害を伴う重症低血糖を起こした際には,本人が対処できないため,介護者(家族など)が対応しなければなりません。その際に使用されるべき特効薬がグルカゴン製剤です。

    しかし,最近まで日本で処方可能であったグルカゴン製剤は,注射製剤のみでした。したがって,グルカゴン製剤が処方されていたとしても,1mLの注射用水を注射器で吸い上げ,グルカゴン1mgの粉末製剤を溶解して注射製剤化して筋肉注射しなければなりませんでした。さらに,注射用のグルカゴン製剤は15℃以下の冷所で保管しなければならず,外出のたびに持ち歩くことは現実的ではないという問題も存在しました。そのため,グルカゴン注射製剤の必要性を,多くのインスリン使用者並びに医療関係者が認識していたのにもかかわらず,ほとんど処方されてこなかったことは紛れもない事実です4)

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