無気肺(atelectasis)は,ギリシャ語の「atelez=不完全な」と「ektasiz=拡張」の複合名詞として命名された。一般的には肺区域あるいは肺葉以上のレベルで容量減少をきたした状態であり,肺胞領域の含気低下により,画像上で透過性の低下,気管支血管束の収束・偏位などを認める。
無気肺は成因が重要であり,治療に直結する。その原因は数多く存在するが,基本的には閉塞性と非閉塞性に分類されることが多く,それぞれ以下のような発生機序が考えられている1)2)。
閉塞部位より末梢の酸素が拡散によって吸収され,結果,虚脱するということから吸収性(resorptive)無気肺とも呼ばれる。胸部X線写真において肺区域あるいは肺葉レベルの虚脱を示すのは,区域・葉気管支の閉塞に起因する。気管支内を閉塞する機転,つまり腫瘍性,気管支結核,気管支結石,分泌物・粘液〔気管支喘息,COPD,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)〕,何らかの誤嚥による気道異物,などが原因になる。閉塞部位によって全肺,肺葉性,区域性となるが,区域気管支より末梢には肺胞間に Kohn孔,肺胞と細気管支間はLambert管などの気道側副路(側副換気)が存在しているため,無気肺は生じにくい。一方,小児は側副路が十分に発達していないため,異物を誤嚥した場合,閉塞性無気肺が急速に完成する。
周囲からの圧排や何らかの肺病変に起因する。発症機序により以下の4つがある。
①受動性無気肺(passive atelectasis):弛緩性無気肺(relaxation atelectasis)とも言われる。壁側/臓側胸膜(parietal/visceral pleura)が接触できない状態,つまり胸水,気胸,縦郭腫瘍,胸膜腫瘍などの存在が原因となりうる。
②圧迫性無気肺(compressive atelectasis):胸郭内圧排による。巨大ブラ,心肥大,動脈瘤,腫瘍,横隔神経麻痺による挙上,大量腹水なども原因になりうる。
③癒着性無気肺(adhesive atelectasis):サーファクタントの欠如,機能不全等により肺胞表面張力の低下が起こり,虚脱が生じる。新生児呼吸窮迫症候群,急性呼吸窮迫症候群(ARDS),急性放射線肺臓炎,外傷後肺挫傷などが原因となりうるが,閉塞性と異なり,気管支はairを取り込める状態である。
④瘢痕性無気肺(cicatrization atelectasis):慢性炎症などを原因とする線維化による。長期化した放射線肺臓炎,肺結核,サルコイドーシス,真菌症,肺線維症,種々の間質性肺炎などが原因となる。
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