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ある医学部予備校の塾長ブログ(村田洋一 大学進学教育GHS 塾長)[日本医事新報特別付録 医学部進学ガイド「医学部への道2024」]

P.15

登録日: 2023-03-01

最終更新日: 2023-03-01

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医学部入試の難化は受験指導も難しくしています。大学の先生方の話を聞くと、医学教育にもやはり苦労しているようです。大学受験の現場であれ、医学部での指導の現場であれ、若者をどう教育していくべきかが問われ続けているのだと思います。

大学受験の現場を見ている私が最大の問題であると思うのは、一部にみられる“とにかく当座の成果を優先する”姿勢です。大学に合格させさえすれば、どう指導しようと構わない、あるいは大学合格が最良の指導の証明だという安易さです。

勉強というものは本来「分かりたい!」からするのであり、分かることが目的なはずなのですが、いつのまにか目的が「分かる」から「試験の点数を上げる」にすり替わっていきます。問題は「試験の点数が上がる」ということと「分かる」ということが必ずしも一致しないという点です。目ざとい人々は「分かる」をそっちのけで「試験の点数を上げる」技術に邁進するようになる理屈です。しかし、それは本人にも、社会全体にとっても大きな弊害になります。

「解き方マニュアル」暗記の弊害

たとえば、数学という多くの受験生が苦手とする科目に対しては、たくさんの問題パターンを端から暗記させる。こういう問題が出たら、この公式を使い、こうなったら式をこう変形し…、と教えていく。二次関数の問題は解と係数の関係をうまく使いなさい、この場面では実数条件を忘れずに、とやっていく。そのとき、「解と係数の関係」とはそもそも何なのか、実数条件を吟味しなければならないのはなぜなのか…、を分かっているかいないかはお構いなしに、とにかくひたすら「解き方マニュアル」を覚えこませるのです。

こういう受験指導をし続けると、受験生たちはこれが“勉強”というものだと勘違いしていくことになります。深くじっくり考えようとしなくなります。そういうアタマで医学部での勉学に入っていくということになるわけです。

その弊害をなくすために、受験生を指導する立場としてやれることは何か。解決方法が一つあります。それは「解き方マニュアルの暗記」より有効な受験指導をすることです。

本当の意味で「分かる」ことを獲得しながら試験の点数も上がる学習指導ができるはずです。否、むしろ、本当に分かって解く方が点数が上を行くことになるであろうことは想像に難くないでありましょう。

本当の意味で「分かる」アタマを創る

数学とは何を学ぶ科目なのか、実数条件とは何で、なぜ吟味しなければならないのか…、を理解しながら数学を学習していくことは本当の理解を実現していき、ついには学習している様々なことがアタマの中でつながりあってくるようになります。それが本当の意味で「分かる」ということであり、試験においても問題を見たときにその問題の根本的な意味を理解して解いていくということができるようになります。

そうして創っていったアタマで進学するのであれば、医学の勉学も真っ当に有効に進められることでしょう。それが受験指導の責任であるに違いありません。

(日本医事新報特別付録・医学部進学ガイド「医学部への道2024」の全文はこちらから無料でダウンロードできます)

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