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本態性高血圧症[私の治療]

No.5162 (2023年04月01日発行) P.41

苅尾七臣 (自治医科大学内科学講座循環器内科学部門教授)

登録日: 2023-03-31

最終更新日: 2023-03-28

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  • 高血圧は,脳卒中,心筋梗塞,心不全,大動脈解離など急性循環器疾患の最大のリスク因子のひとつである。循環器疾患のリスクは,115mmHgを最低にして,収縮期血圧が20mmHg上昇するごとに2倍ずつ増加する。わが国の高血圧患者は4300万人と推定される。

    ▶診断のポイント

    【方針】

    高血圧患者は,①血圧レベル(診察室外血圧),②合併症と臓器障害・リスク因子,③二次性高血圧,の3視点より評価する。

    すべての高血圧患者には家庭血圧測定が推奨され,高血圧診断と降圧治療目標は,診察室血圧よりも家庭血圧をより重要視する。著しい血圧変動や治療抵抗性高血圧,臓器障害,循環器疾患の既往等を有するハイリスク群では,24時間自由行動下血圧測定(ABPM)を行うことが望ましい。

    睡眠時無呼吸症候群,糖尿病,慢性腎臓病,心不全を合併する患者や,降圧療法中にもかかわらず心肥大の改善がみられない患者では,ABPMまたは夜間家庭血圧計で夜間血圧を評価することが望ましい。

    【診断】

    診察室血圧が140/90mmHg以上を高血圧と診断する。

    早朝高血圧は,診察室血圧レベルにかかわらず,早朝家庭血圧(起床後1時間以内に2回測定した早朝血圧の5日間平均)が135/85mmHg以上の状態である。

    家庭血圧が135/85mmHg以上,ABPMでの24時間血圧が130/80mmHg以上,昼間血圧135/85mmHg以上,または夜間血圧120/70mmHg以上(夜間高血圧)の状態が,診察室外血圧の高血圧である。この状態で,診察室血圧が140/90mmHg未満の場合は,仮面高血圧と定義する。

    白衣高血圧は,診察室血圧が高血圧(140/90mmHg以上)であっても,診察室外血圧がすべて基準閾値未満(家庭血圧や昼間ABPM血圧が135/85mmHg未満,ABPMでの24時間血圧が130/80mmHg未満かつ夜間血圧が120/70 mmHg未満)を示す状態である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    高血圧の生涯リスクを最小限にするためには,より早期から,より厳格に,24時間にわたる降圧を達成することが重要である。

    【薬物療法の開始と目標血圧】

    診察室血圧正常高値レベル以上(120/80mmHg)で生活習慣(減塩,食事,運動,睡眠,生活環境とストレス)の修正を開始する。高血圧〔140/90mmHg以上(家庭血圧では135/85mmHg以上)〕や,高値血圧〔130~139/80~89mmHg(家庭血圧では125~134/75~84mmHg)〕では,リスクに応じて薬物治療の開始を検討する。75歳以上は診察室血圧140/90mmHg(家庭血圧では135/85mmHg)未満,75歳未満は診察室血圧130/80mmHg(家庭血圧では125/75mmHg)未満をめざすが,目標降圧値は患者の基礎疾患や合併症を十分に考慮して決定する。

    白衣高血圧は,非高血圧者よりも将来の脳心血管病イベントリスクが高いため,注意深くフォローする。

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