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血液疾患合併妊娠[私の治療]

No.5163 (2023年04月08日発行) P.48

森川 守 (関西医科大学医学部産科学・婦人科学講座産科教授)

登録日: 2023-04-11

最終更新日: 2023-04-05

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  • 妊娠合併症として比較的遭遇しやすい主な血液疾患は,白血病,骨髄異形成症候群,再生不良性貧血,免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura:ITP),本態性血小板血症,血友病,von Willebrand病(VWD)であろう。なお,血栓塞栓症の原因となる先天性の血栓性素因であるプロテインC欠損症,プロテインS欠損症,アンチトロンビン欠損症,補体異常である血栓性微小血管症は割愛する(他稿を参照されたい)。 

    ▶診断のポイント

    妊娠前に診断されていない疾患の場合には,分娩を無事終了させるためにも速やかに診断確定をめざす。血液検査は確定診断のために重要である。血算のみならず血液分画,凝固系ならびに線溶系を測定する。出血性の血液疾患では,止血時間を測定する。血小板減少症では,偽血小板減少を鑑別する。妊婦健康診査で初期,中期,末期に測定された血算の値の推移にも留意する。骨髄穿刺は妊娠中禁忌ではない。必要に応じて施行する。妊娠中変化を伴う場合があることに留意する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    白血病や骨髄異形成症候群などでは,母体生存を優先しつつ,抗癌剤の母体投与による妊娠継続を考慮する。キャンサーボードならびにインフォームドコンセントが重要である。胎児が胎外成育可能な妊娠週数に至ったら,胎児を娩出(妊娠を終了)し母体治療に専念する。妊娠22週未満では妊娠を終了し母体治療に専念する。抗癌剤は催奇形性があり,妊婦への投与は原則禁忌であるが,妊娠13週以降の有益性投与を考慮する。断乳を推奨する。骨髄機能低下では回復するまで休薬する。妊娠中は,母児感染防御能を向上させるために白血球数は増加する。また,胎児肺成熟を促すリンデロン(ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム)投与では白血球数は増加する。

    血小板減少症では分娩時大量出血が懸念される。ITP合併妊娠ガイドラインの管理に準じる。血小板数は妊娠中では2万/μL以上,経腟分娩では5万/μL以上,帝王切開では8万/μL 以上,無痛分娩あるいは腰椎麻酔は10万/μL以上の維持をめざす。ステロイド療法は,効果発現までに1~2週間程度要する。免疫グロブリン療法は,効果発現までに3~7日程度要する。高価であり,特定医療費(指定難病)支給認定申請を行う。血小板の補充療法は即効性があるが,地域によっては確保が困難である。抗血小板抗体を産生すると次回補充時に無効となる可能性がある。非免疫性では,免疫療法は無効であり,補充療法を優先する。妊娠中の血小板減少症の約75%が妊娠性血小板減少症,約20%が妊娠高血圧症候群やHELLP症候群,約5%がITPや全身性エリテマトーデス,約1%がその他である。

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