慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)には,ステロイドや免疫抑制薬による治療で寛解・治癒が期待できる疾患群もあるが,多くの場合不可逆性であることから,治療の目標は「いかにして,悪化の速度を遅くするか?」にかかってくる。また,原疾患として近年増加している糖尿病(DM)や腎硬化症などの場合は,それらの予防・治療が,腎機能低下を防ぐ手段であることを前提と考えたい。
特に高齢者の場合,脱水などで容易に腎機能が悪化して血清クレアチニン値の上昇をきたすことがある。浮腫の有無や毎日の体重測定などから,体液貯留傾向や脱水の所見を確認の上,1日当たり1000~1500mLの尿量確保を目標とする。水分摂取により浮腫が進行する場合には,利尿薬を併用することも考慮する。
近年の透析導入に至る原疾患をみると,DM(40.7%)と腎硬化症(17.5%)が多数を占めることから,これらの原疾患を厳重に管理し,腎障害の進行を予防することが最善の策である。
降圧薬の選択については,「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」(以下,ガイドライン)において,DM合併CKDのA区分(CKDの重症度分類)のすべて,およびDM非合併CKDのA2,3区分でACE阻害薬とARBが,DM非合併CKDのA1区分ではACE阻害薬,ARB,Ca拮抗薬,サイアザイド系利尿薬が推奨されている(B1)。ただし,CKDステージG4,5ではACE阻害薬,ARBによる腎機能悪化や高カリウム血症に十分注意し,これらの副作用出現時には速やかに減量・中止し(B1),Ca拮抗薬へ変更することが推奨されている(C1)。また,75歳以上の高齢者のCKDステージG4,5では,脱水や虚血に対する脆弱性を考慮し,Ca拮抗薬が推奨されている(C1)。一方,高血圧を伴う腎硬化症の場合,降圧目標は収縮期血圧120mmHg未満の厳格な降圧は推奨されず,140/90mmHg未満を目標とする(C2)。
糖尿病性腎症の管理においては,生活習慣の修正〔適切な体重管理(BMI 22),運動,禁煙,塩分制限食など〕と,「糖尿病診療ガイドライン2016」で推奨されている血糖(HbA1c 7.0%未満),血圧(収縮期血圧130mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満),血清脂質〔LDLコレステロール120mg/dL未満,HDLコレステロール40mg/dL以上,中性脂肪150mg/dL未満(早朝空腹時)〕の管理目標値をめざす集約的治療が推奨されている(B1)。
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