せん妄に対する考え方には病院と在宅では違いがある。病院はせん妄を疾患として診るが,在宅では自然現象,「お迎え現象」と解釈している実践者も多い。
「終末期せん妄」は,終末期の死亡直前に起こる患者の意識変容(near death awareness)のことであり,文化的には世界各国では病気ではなく,亡くなる過程の正常な生理的現象,「あの世に向かっている現象」とも解釈されている。故人が患者を迎えに来るという体験は,「お迎え(death bed visions)」として国際的にも共通してみられる。日本では,在宅ホスピスケアを実践していた岡部健(故人)が,この現象に関して大規模な調査を行い,「お迎え」体験として報告している。
在宅では病院で診られる「治療抵抗性せん妄」は少ないが,終末期せん妄に対する知識,対処法は必要である。
・ぼんやりしていたり,もうろうとしていたりする。
・言うことのつじつまが合わず,おかしなことを訴える。
・物忘れがひどく,ぼけたように見える。
・夜眠らずに興奮したり,昼夜逆転になっている。
・症状が変動しやすく,夜間に不安定になることが多い。
・点滴やチューブを自分で抜いたり,安静が保てない。
・せん妄の評価(confusion assessment method:CAM)は,一般の医療者でも実施できること,所要時間が5分程度と簡便なこと,日常臨床で広く利用され,感度・特異度ともに高いことから,推奨されている。①急性発症で変化する経過,②注意力散漫,③支離滅裂な思考,④意識レベルの変化,の4項で構成され,①②を必須とし,かつ③または④を満たせば,せん妄と診断する。
・家族が見守れるか,薬物治療が必要か,を見きわめる。
・事前に家族には前述の症状が出現すること,見守ること,否定しないこと,などを話しておく。
・家族が夜間眠れないため疲弊したり,患者に転倒,転落などの危険が感じられる場合には,薬物療法を検討する。
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