近年,内視鏡検査の普及や機器・技術の向上により,十二指腸病変の発見機会が増加している。十二指腸ポリープは良性の非腫瘍性病変であることが多いが,腺腫は臨床的にがん化をきたす可能性があるため,異型度の吟味および慎重な治療適応の判断が必要である。
本稿では,表在性非乳頭部十二指腸腫瘍(superficial nonampullary duodenal epithelial tumor:SNADET)における腺腫について述べる。
十二指腸は球部,下行部,水平部,上行部,の4区域に分類され,膵頭部を囲むようにCの字を描いて走行する。下行部より肛門側は後腹膜に固定されており,可動性が低いため,病変の位置によっては内視鏡観察が困難になることがある。球部後壁や上十二指腸角内側などは盲点となりやすく,注意を要する。内視鏡先端にフードを装着することで,より詳細な観察が可能となり,必要に応じてブスコパンⓇ(ブチルスコポラミン臭化物)などの鎮痙薬を使用して見落としのないように観察する。また,乳頭側の病変は接線方向となり観察が難しいことがあるため,十二指腸鏡を使用した観察も有用である。
十二指腸病変と遭遇した場合は,色調や肉眼型,大きさをまず評価する。腺腫や粘膜内癌の多くは隆起型であり,一般的に周囲との境界が明瞭である。色調としては病変の白色化が典型的な所見であり,これは吸収上皮細胞内の脂肪粒の存在や,リンパ流の停滞が関与していると考えられている。粘液形質を用いた研究では,水平部から肛門側にみられる腺腫は腸型形質を有し,このような白色変化が出ることが多いとされる。しかし,球部から下行部にみられる発赤調の腺腫は胃型形質を有し,高異型度であることが多く,がん化に注意する1)。また,不整な凹凸を有する場合や腫瘍径が大きい場合は,がんを示唆する所見であり,留意する必要がある2)。インジゴカルミンを散布して境界や陥凹・分葉構造の有無などを詳細に観察することは有用である。画像強調内視鏡(IEE)併用拡大による表面構造や微細血管の不整に注目した良悪性の鑑別診断法なども近年報告されている3)4)。
十二指腸の壁は薄く,しばしば高度の線維化をきたして内視鏡治療の妨げになることがあるため,十二指腸腫瘍に対する生検はむやみに行わず,前述のように通常光や拡大内視鏡検査を用いて術前診断を行うよう心がけたい。生検による正診率も,腫瘍の不均一さやサンプリングエラーの影響で高くないとされている。
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