じん肺症は,土塵や金属・鉱物の粉塵などを長期間にわたり大量に吸入することで発症する肺の線維増殖性病変のことである。主な二大じん肺症として,珪肺とアスベスト肺がある。
珪肺は遊離珪酸の曝露により発症し,胸部X線画像上,上肺野優位の粒状~塊状影,肺門リンパ節の卵殻状石灰化を認める。
アスベスト肺は石綿の曝露により発症し,胸部X線画像上,下肺野優位の網状影などの線維化所見を認める。アスベスト肺は特発性肺線維症との鑑別が問題となるが,胸部高分解能CTにて胸膜直下小葉中心性粒状影,分岐洗浄影,曲線様陰影などの小葉中心から始まる線維化所見や胸膜プラークに注目して診断する。
粉塵曝露歴があり,胸部画像所見が典型的なじん肺症では,病理組織診断は不要であるが,非典型的胸部画像所見でじん肺症が疑われる場合は,可能な限り,経気管支肺生検や外科的肺生検による病理組織学的診断,肺内元素分析,石綿小体・石綿線維の測定などを行う必要がある。生前診断がつかない場合でも,剖検でじん肺の診断をしておくことは,労災補償や遺族年金の請求に必要である。
じん肺症は,通常の検診やじん肺検診で発見されることや,無症状であることが多い。この時点から,職場における粉塵曝露の軽減や配置転換などの管理区分決定のための診断書を作成し,患者の居住地の労働局に申請しておくことが重要である。進行した場合は,慢性の咳嗽,喀痰が認められることがある。この場合は,じん肺症の合併症の続発性気管支炎として,労災申請が可能となる。
続発性気管支炎の治療は,去痰薬やマクロライド系薬少量長期療法などの対症療法が主体となる。鎮咳薬は喀痰排出を抑制するため,原則として使用しない。マクロライド系薬については,じん肺症に非結核性抗酸菌症を合併する場合があることから,クラリスロマイシン耐性化の懸念上,クラリスロマイシン以外を選択することが望ましい。
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