食事療法と運動療法を行い,代謝状態が不良のときに経口薬や注射薬を少量から開始する。患者の病態,年齢や肥満の程度,合併症の程度,肝・腎機能,インスリン分泌能やインスリン抵抗性の程度などを考慮して,経口薬または注射薬を使用するか決定する。
「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を参考にする。アルゴリズムのStep 1で病態に関して,肥満の有無で薬剤の候補を挙げている。Step 2で安全性に関して,低血糖リスクの高いスルホニル尿素(SU)薬およびグリニド薬の高齢者への使用に関する注意喚起がなされている。Step 3で心血管疾患,心不全,慢性腎臓病への効果を期待した処方を取り上げている。Step 4で服薬継続率やコストを参照に薬剤を選択している。
経口薬は,インスリン抵抗性非促進系,インスリン分泌促進系,インスリン製剤の3つに分類できる。薬剤の使用に際しては,少量から開始し,血糖値やHbA1cの値をみながら増量する。SU薬では,患者に低血糖の対応を十分に指導する。3カ月間投与して目標に達しない場合には,併用や他の薬剤を検討する。体重減少や生活習慣の改善に伴って,薬剤の減量・中止が可能になることもある。
一手目 :メトグルコⓇ250mg錠(メトホルミン塩酸塩)もしくはグリコランⓇ250mg錠(メトホルミン塩酸塩)1回1錠1日2回(朝・夕食後)
病態などにより二手目以降として使用。
二手目 :〈一手目に追加〉アクトスⓇ15mg錠(ピオグリタゾン塩酸塩)1回1錠1日1回 (朝食後)
病態などにより一手目あるいは三手目以降とする。
一手目 :以下のいずれかを使用
病態などにより二手目以降として使用。
二手目 :〈一手目に追加〉アマリールⓇ0.5mg錠(グリメピリド)1回1錠1日1回(朝食後),またはグリミクロンⓇHA 20mg錠(グリクラジド)1回1錠1日1回(朝食後)
病態などにより一手目あるいは三手目以降とする。
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上記の薬剤に加え,速効型インスリン分泌促進薬やα-グルコシダーゼ阻害薬は,食後の高血糖の抑制に効果的である。さらにSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は,体重減少が期待でき,肥満2型糖尿病に有用であり,心不全や腎障害など合併症のある2型糖尿病に対して良い選択と考えられる。
妊娠中または妊娠する可能性の高い場合および授乳中には,原則的にすべての経口薬とGLP-1受容体作動薬を使用しない。
注射療法の導入など不明なことは積極的に専門医にアドバイスを求める。日本糖尿病学会のウェブサイトで検索できる。
【参考資料】
▶ 日本糖尿病学会, 編著:糖尿病治療ガイド2022-2023. 文光堂, 2022.
▶ 坊内良太郎, 他:糖尿病. 2022;65(8):419-34.
▶ 日本糖尿病学会:専門医.
http://www.jds.or.jp
山内敏正(東京大学大学院医学系研究科内科学専攻生体防御腫瘍内科学講座教授/同大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科科長)
庄嶋伸浩(東京大学大学院医学系研究科内科学専攻生体防御腫瘍内科学講座准教授/同大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科)