2型糖尿病(DM)例では多くが高カリウム(K)血症を呈する。高K血症を呈すると、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS-i)やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)など、2型DM例で心腎保護作用が示されている薬剤の継続が難しくなるが、GLP-1受容体作動薬(GLP-1-RA)はDPP-4阻害薬に比べ、一般的な2型DM例における高K血症リスクを減らしRAS-i継続率を高めている可能性が明らかになった。北京大学(中国)のTao Huang氏らが、スウェーデン大規模観察データ解析の結果として8月12日、JAMA Internal Medicine誌で報告した。
解析対象はストックホルム在住でGLP-1-RAかDPP-4阻害薬を初めて開始した2型DM3万3280例である。末期腎不全例や「血中K>5.5 mEq/L」既往例、「K吸着剤使用」既往例などは除外されているが、「2型DM」以外の導入基準は設定されていない。
1万3633例がGLP-1-RAを開始し、DPP-4阻害薬開始は1万9647例だった。平均年齢は63.7歳、女性が40.3%を占めた(群間差なし)。薬剤開始時の血中K濃度は平均で4.18 mEq/Lだった(群間差なし)。またRAS-iの服用率は65.3%、MRAは5.2%だった(いずれも群間差なし)。ループ利尿薬は12.3%で使用されていた(群間差なし)。
これら3万3280例で「高K血症」(>5.0 mEq/L)、「中等度以上高K血症」(>5.5 mEq/L)の頻度とRAS-i中止率などを比較した。背景因子のバラツキは「逆確率重み付け」で補正、DPP-4阻害薬/ GLP-1-RA開始後の治療変更の影響は “inverse probability of censoring weighting” で補正した。
・全高K血症(>5.0 mEq/L)
その結果、「血中K>5.0 mEq/L」の発生リスクは、GLP-1-RA群でDPP-4阻害薬群に比べ有意に低くなっていた。すなわち諸因子補正後の発生率はDPP-4阻害薬群で4.6%/年(追跡期間中央値 3.9年)だったのに対し、GLP-1-RA群では2.9%/年(同3.0年)だった。ハザード比(HR)は0.62(95%信頼区間[CI]:0.50-0.76)だった。
・中等度以上高K血症(>5.5 mEq/L)
こちらも同様に、GLP-1-RA群で有意なリスク低下を認めた。発生率はGLP-1-RA群が 1.1%/年、DPP-4阻害薬群が 2.5%/年でHRは0.37(95%CI:0.25-0.56)だった。
・RAS-i継続率
加えてGLP-1-RA群では、RAS-i中止率も有意に低くなっていた。GLP-1-RA /DPP-4阻害薬開始時にRAS-iを併用していた2万1751例中、10.8%がその後RAS-iを中止したが(追跡期間中央値 3.9年)、GLP-1-RA群における対DPP-4阻害薬のHRは0.89 (95%CI:0.82-0.97)だった。
Huang氏らはGLP-1-RA群でRAS-i中止リスクが低かった点に注目し、GLP-1-RAを用いた方が、心腎保護作用が証明されているガイドライン推奨治療をより併用しやすくなる可能性があると結論している。
本研究は、中国自然科学基金委員会、スウェーデン研究会議、スウェーデン心肺基金、米国国立衛生研究所からの資金提供を受けた。