わが国でも臨床応用開始から4年以上がたった経皮的左心耳閉鎖術(left atrial appendage occlusion:LAAO)だが、米国実臨床における長期の有効性と安全性が明らかになった。8月25日からアムステルダム(オランダ)で開催された欧州心臓病学会(ESC)学術集会において、James V. Freeman氏(イエール大学、米国)が米国大規模レジストリデータの解析結果として報告した。
今回の解析対象は、米国で経皮的LAAO(WATCHMAN)を施行された、米国高齢者公的医療保険(メディケア)受給の3万4975例である。全国心血管データレジストリ(NCDR)中のLAAOレジストリから抽出した。
平均年齢は77.5歳、女性が41.8%を占めた。CHA2DS2-VAScスコア平均は4.7、HAS-BLEDスコア平均は3.1だった。
なおLAAO施行後遠隔期の抗血栓療法については調べていないという。
これら3万4975例の「脳卒中」「脳梗塞」と「死亡」リスクを、メディケア診療記録から探った。
・脳卒中
「死亡」を競合リスクとして扱った場合の「脳卒中」発生率は、時間経過とともにほぼ直線的な増加を認めた(≒脳卒中抑制作用の経時的減弱なし)。具体的にはLAAO施行1年後で1.84%、2年後3.45%、3年後4.46%、3.7年後が5.52%である。
年率に換算すると1.89%となった。「脳梗塞」のみなら1.55%である。
「血栓塞栓症リスクが高い(CHA2DS2-VAScスコア平均4.7[前出])患者集団としては発生率が低い」とFreeman氏は評価した。
・死亡
生存率も同じく直線的に推移した。すなわちLAAO施行1年後は91.4、2年後82.6%、3年後74.4%、4年後で63.8%となった。
ただし1年あたりの死亡率は9.51%に上る。Freeman氏はこの死亡率を「比較的高い」と評価し、低リスク例選択が重要だと述べた。
死亡と関連する要因としては、「標準体重以下」(ハザード比:2.2)と「転倒リスク高」(同1.46)、「心不全」(同1.44)が主なものだった。
本研究における利益相反は開示されなかった。
なお本研究は現在、Angela Y. Higgins氏が筆頭著者となり論文投稿中だという。