わが国でも近々製造承認が見込まれる「年2回注射型LDL-C低下薬」インクリシランによる長期成績が、8月25日からアムステルダム(オランダ)で開催された欧州心臓病学会(ESC)学術集会において、R.Scott Wright氏(メイヨークリニック、米国)により"ORION-8"として報告された。6年継続使用後もLDL-C低下作用は減弱せず、新たな安全性の懸念も生じなかった。インクリシランは肝mRNAへの干渉を介し、PCSK9合成を阻害。その結果、LDL-Cが低下する。初回投与、初回投与3カ月後、それ以降は6カ月ごとの皮下注で済む。
解析対象は、インクリシランを用いたランダム化比較試験に参加した3275例中(含プラセボ群)、全例インクリシラン服用のオープンラベル観察研究に参加した3274例である。CV高リスク(±アテローム動脈硬化性心血管疾患[ASCVD])既往例(ORION-1、3、11)、ASCVD例(ORION-10)、ヘテロ接合型家族性高コレステロール血症例(ORION-9)が含まれる。いずれも最大用量のスタチン服用下でLDL-C低下不十分、またはスタチン不忍容例である。
平均年齢は64.9歳で、65歳以上が56.5%を占めた。男性の割合が67.7%、82.7%がASCVD既往例だった。
脂質低下薬非服用は6.8%のみ。93.2%がスタチンを服用、16.6%がエゼチミブを服用していた(重複あり)。
インクリシラン使用期間は平均で3.70年、中央値が3.27年、最長で6.84年だった。
これら3274例を対象にインクリシラン使用時のLDL-C値と安全性を検討した。
・有効性
LDL-C目標値達成率は6年間使用後も79.1%で、使用開始90日後の74.6%と同等だった。
ASCVD例(LDL-C目標値「<70mg/dL」)のみでも79.4%、非ASCVD高リスク例(同「<100mg/dL」)は74.3%だった。
LDL-C値低下幅も同様に経時的な減少は見られず、使用開始90日後に観察された約50%の低下幅が6年後まで維持された。
・安全性
薬剤関連有害事象は9.1%に見られたが、使用停止に至る有害事象発現率は2.4%のみだった。
薬剤関連有害事象で多かったのはやはり「注射部位反応」(5.4%)で、「肝イベント」(0.3%)、「糖尿病発症・増悪」(1.1%)は稀だった。
なお、5.1%で抗薬物抗体が出現したが、抗体の有無はインクリシランによるLDL-C低下作用や有害事象リスクに影響を与えていなかった。
一連のORION試験はMedicines Companyからの資金提供を受け実施されている。