日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は9月22日、都内でメディアセミナーを開催し、糖尿病の新しい呼称として「ダイアベティス」を有力候補として提案する考えを表明した。今後、1年程度をかけて広く関係団体や市民と議論をしていくとしている。
学会と協会による新しい病名・呼称の検討は2019年に遡る。「糖尿病」という病名により多くの患者がスティグマ(疎外感、恥辱などの感情)を抱えていること、また糖尿病のある人への偏見や差別を払拭し、糖尿病のない人と変わらない暮らしができるよう支援するアドボカシー活動が必要―との認識が両者で共有され、合同アドボカシー委員会が設立された。
2023年1月には合同委員会内に呼称案検討ワーキンググループ(WG)が設置。WGは5月に「ダイアベティス」を候補とすることを決定し、学会と協会での検討を依頼した。その後、学会と協会はアドボカシー活動の一環として新しい呼称を提案し、関係団体や市民と対話を重ねていく方針を確認、今回の発表に至ったもの。
協会理事でWGリーダーを務めた津村和大氏(川崎市立川崎病院部長)は、新しい呼称に求められる要件として学術的、国際的、新規性などを挙げ、WGでは候補案として「ダイアベティス」のほか「DM」「糖代謝症候群」などが検討されたことを紹介した。
今後の取り組みについてアドボカシー委員会委員の山内敏正氏(東京大学教授)は、「ダイアベティス」を呼称案の有力候補としつつも、今後1年程度の時間をかけて当事者、医療従事者、関係団体、市民、企業関係者、行政などを含めて広く議論をしていく方針を説明。呼称変更を実施すべきか、変更する場合でも「ダイアベティス」とするかも含めて検討していく考えを示した。
セミナーにはIDF-WPR議長の門脇孝氏(虎の門病院長)、協会理事長の清野裕氏(関西電力病院総長)、学会理事長の植木浩二郎氏(国立国際医療研究センター糖尿病研究センター長)らも出席。門脇氏は、糖尿病は高度経済成長期に増加し、その頃に不治の病というイメージが定着したと指摘。また「糖尿病は個人の責任感の欠如のせい」といった自己責任論は二重、三重に誤りだとしつつ、こうしたイメージが患者にスティグマを生じさせているとして、病名、呼称を変える意義を強調した。
清野氏は「糖尿病」という名称はわずか100年余の歴史しかなく、病態を正しく反映していないこと、排泄物の名前がつく病名は患者に喜ばれないことなどを指摘、いまは国際的、学術的にも呼称を見直す機運にあるとした。