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【文献 pick up】デノスマブはBP製剤に比べ骨粗鬆症例の糖尿病発症を抑制するか―傾向スコアマッチ比較/BMJ誌(4月)

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-09-27

最終更新日: 2023-09-27

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プライマリケア医受診の骨粗鬆症患者(女性)がデノスマブを使用すると、経口ビスホスホネート(BP)製剤に比べ年間1000例当たり2.6例で2型糖尿病(DM)発症が抑制されるとのデータが、British Medical Journal誌に掲載された。報告者は中国・中南大学のHouchen Lyu氏ら。若干旧聞に属するが紹介したい。

デノスマブはそのRANKL阻害作用を介した肝インスリン抵抗性改善、あるいはNF-κB系抑制によるβ細胞増殖促進など、DM発症抑制作用が期待されていた。

【対象】

今回解析対象となったのは、DM診断歴のない45歳以上の骨粗鬆症例中、新規にデノスマブを開始(新規・切替)した4301例と、傾向スコアでマッチした経口BP製剤服用2万1038例である。英国プライマリケア医データベースから抽出した。

平均年齢は75.7歳、女性が94.3%を占めた。体重が「正常」だったのは41%のみ、「低体重」は17%だった。

【方法】

診察記録を用いて2型DM発症率を、デノスマブ開始群と経口BP製剤群間で比較した。追跡は「2型DM診断」「デノスマブ/経口BP製剤中止」「死亡」「クリニック転院」まで続けた(最長5年間)。

【結果】

平均2.2年間の追跡期間中、デノスマブ群では経口BP製剤群に比べ、2.61000人年、2型DM発症率が有意に低くなっていた。ハザード比にすると0.6895%信頼区間[CI]0.52-0.89)である。

ただし亜集団別解析を見ると、「DM予備群」では、デノスマブ群における2型DM発症HR0.5495%CI0.35-0.82)の有意低値だったのに対し、それ以外では0.92(同:0.65-1.32)の減少傾向にとどまった(交互作用P=0.05)。

【考察と結論】

Lyu氏らはこれらの結果を、DM高リスクの骨粗鬆症治療薬選択に当たり考慮すべきデータだと考えているようだ。

なお米国内科学会が本年初めに公表したメタ解析によれば、プラセボと比べたデノスマブによる大腿骨近位部骨折の3年間治療必要数(NNT)は「250」だった。BP製剤は「167」である。

今回の比較研究への資金提供に関する記述はなかった。

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