がん治療後長期生存患者(がんサバイバー)における心血管系(CV)リスク上昇が注目されるようになって久しい。しかし現時点でこのようなリスク上昇に対し、確実な抑制作用が証明された薬剤はない。
そのような状況下で10月11日、施設における多職種介入心臓リハビリテーション(心リハ)プログラムが、がんサバイバーの運動耐容能のみならずCVリスク因子をも改善するというランダム化比較試験(RCT)"CORE"が、JAMA Cardiology誌に掲載された。著者はヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア病院センター(ポルトガル)のSofia Gonçalves Viamonte氏ら。
CORE試験の対象はポルトガル在住の、18歳以上でがん初発に対する根治的治療が終了してから2カ月以上が経過したCV高リスク(心毒性薬剤治療、高線量放射線、CV疾患既往など)の80例。心リハプログラム経験者、運動不耐例は除外されている。
平均年齢は54歳、女性が約4分の3を占めた。
がん種は「乳癌」が最多で70%弱、次いでリンパ腫の30%弱だった。
がん治療としてはおよそ85%でアントラサイクリン系薬剤が使用されており、胸部放射線照射歴は約65%に認められた。
これら80例は「多職種介入施設心リハ」群と「施設外運動プログラム」群にランダム化され、2カ月間観察された。
「多職種介入施設心リハ」群では、(1)運動セッション(週2回)と、(2)生活習慣改善の重要性を学ぶ集団座学(週1回、運動セッションと同日)、(3)CV危険因子管理の重要性を学ぶ集団座学(月1回)、(4)栄養士による個別化された食事プラン―が提供された。運動セッションは10分間のウォームアップ後、有酸素運動(30~40分)とアイソトニック(10~15分)。そしてクールダウン(5~10分)で終了する。
一方、「施設外運動プログラム」群では、(1)医師が要否を判断する院内栄養・メンタル管理、(2)地域施設における「多職種介入施設心リハ」群と同等の運動セッション(専門家監視下)―が提供された。
その結果、ランダム化8週間後、1次評価項目である運動時「最高酸素摂取量(peak Vo2)」は「多職種介入施設心リハ」群で2.1mL/kg/分の有意増加を認めた一方(P<0.01)、「施設外運動プログラム」群では0.8mL/kg/分の増加傾向のみだった(群間差P=0.03)。
また2次評価項目であるCVリスク因子の多くも「多職種介入施設心リハ」群で「施設外運動プログラム」群に比べ有意な改善を認めた。
たとえば血圧は「多職種介入施設心リハ」群で「10.4/4.5mmHg」の有意低値となり、心拍数も「7.6拍/分」の有意低値だった。またLDL-Cとトリグリセライド濃度も「多職種介入施設心リハ」群で有意に低くなっていた。さらに「体組成」と「QOL」も「多職種介入施設心リハ」群でのみ有意に改善されていた。
一方、IL-6とhsCRP濃度はいずれの群でも有意な低下を認めなかった。
「多職種介入施設心リハ」は既存施設を活用して実施できたため、新規の施設投資を必要としない。そのためViamonte氏らは、がんサバイバーではCVイベント抑制の観点からこのようなリハビリを導入すべきだと考えているようだ。
本研究の著者らに開示すべき利益相反はないとのことである。また外部からの研究資金提供については記載がなかった。