・腹部症状や排便状況に困ることなく普通に暮らせることが治療目標。
・ステロイドフリーでの内視鏡的寛解が当座の目標だが,しゃにむにめざすことが必ずしも正解とは限らない。
・寛解導入と寛解維持をわけて考える。
・5-ASA製剤とステロイドの適切な使用がキモ。
・中等症軽めは5-ASA製剤で寛解導入を行い,そのまま維持治療に移行する。
・5-ASA不耐例が増加しており,患者に初めて処方する際は注意喚起を。
・投与する場合は最低プレドニゾロン30 mg/日から。投与量を日和ると,効くものも効かなくなる。
・抵抗,依存例への対処法を知り,いつまでも続けることがないように。
・ペンタサⓇ坐剤,ペンタサⓇ(メサラジン)注腸,レクタブルⓇ注腸フォームを使いわける。
・寛解導入療法としてのCAP療法,カロテグラストメチルは安全に使用可能。
・ステロイド依存例に対する第一選択はチオプリン製剤であるが,使い方にコツがいる。
・フィルゴチニブは使いやすいJAK阻害薬。
・症状をしっかりモニタリングすること。
・内視鏡は他のモニタリングツールで活動性が推定できない場合に施行する。
・予習と外来サマリー記載は必須。
・ステロイドフリーでの内視鏡的寛解が得られないなら紹介を。
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)は,免疫学的な異常により大腸に炎症をきたし,慢性的もしくは繰り返す下痢,血便の症状を呈する疾患である。現在のところ治癒させることはできず,患者は何らかの治療を生涯継続し,病状をコントロールしなければならない。
UCは,「死なないけど治らない,生活上のQOLを阻害する疾患」と言える。したがって,治療目標は,病気を持ちつつも普通の生活(病気を持ってないと仮定した場合に送ることができると考えられる生活)にできるだけ近づけることである。そのためには,病気の活動性が落ちついた状態(寛解)を長期にわたり維持することが重要である。
近年,「臨床症状の寛解だけでなく,内視鏡的寛解(粘膜治癒)をめざすべき」と言われている。内視鏡的寛解が得られると再燃のリスクがより減少することは確かである。一方で,内視鏡的寛解をめざすための薬剤による副作用で,QOLが悪化するようでは本末転倒である。UCで使われる薬剤のうち,現在および将来のQOLを悪化させる可能性の大きいものはステロイドの継続使用である(ステロイドを使ってはならない,というわけではない。上手に使用する必要があるということ)。したがって,実臨床上めざすべきものは「ステロイドフリーでの内視鏡的寛解」と言える。
しかし,臨床的寛解ではあるが内視鏡的寛解ではない人に,しゃにむに内視鏡的寛解をめざして治療強化することがよいのかについては,よく考えなければならない。そのために,より強力な治療が必要とされるのであれば,治療によって副作用が出る可能性もある(表1)。また,患者が治療強化を希望しない場合もあるし,本来,薬剤コストも上昇する(難病助成制度で患者負担が増えないのはある意味考えものである)。したがって,「内視鏡的寛解を本当にめざすべきか?」という問題意識を持つことも必要である。
いずれにせよ,実臨床では臨床的寛解が最低限の目標であり,その際,臨床的寛解の定義は「排便状況などが病気の発症する前の状態になる」と考えるべきである。このように厳密に臨床的寛解をとらえれば,それは内視鏡的寛解にほぼ近いと考えてよい。