偽性腸閉塞症は,物理的閉塞がないにもかかわらず,消化管運動機能障害のために腸閉塞様症状をきたす疾患群である。術後や感染症,心血管系イベント,全身疾患に続発して急性,亜急性に大腸が拡張する疾患としての急性偽性腸閉塞症(オジルビー症候群)と,慢性持続性に機械的イレウス様症状を呈する慢性偽性腸閉塞症(chronic intestinal pseudo-obstruction:CIPO)に分類される。CIPOには,消化管病変による原発性,全身疾患や薬剤に伴う続発性,原因不明の特発性があり,原発性には,ヒルシュスプルング病(腸管無神経節症)や慢性特発性偽性腸閉塞症(chronic idiopathic intestinal pseudo-obstruction:CIIP)を除いた,ヒルシュスプルング病類縁疾患等があり,小児期のCIIPの診断においては鑑別が必要である。成人のCIIPの診断においては,続発性の偽性腸閉塞症を鑑別することが重要である。
また,後天性巨大結腸症は器質的疾患を伴わずに慢性的に大腸が拡張し,腹部膨満や排便障害をきたす病態である。
オジルビー症候群では,数時間~数日の急性,亜急性に進行する経過に注意する。腹部単純X線検査で大腸に限局した著明な拡張を認めるが,腹部造影CTで機械的閉塞がないことを確認する。
CIIPでは以下の7項目をすべて満たすことが診断基準とされている。①腹部膨満,嘔気・嘔吐,腹痛等の入院を要するような重篤な腸閉塞症状を長期に持続的または反復的に認める,②新生児期発症では2カ月以上,乳児期以降の発症では6カ月以上の病悩期間を有する,③画像診断では消化管の拡張と鏡面像を呈する,④消化管を閉塞する器質的な病変を認めない,⑤腸管全層生検のHE染色で神経叢に形態異常を認めない(注:腸管全層生検が困難な場合は,シネMRIまたは消化管内圧検査で小腸を中心とする明瞭な運動異常が証明される),⑥小児では巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症と腸管部分拡張症を除外する,⑦続発性CIPOを除外する。
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