2型糖尿病(DM)を問わずその心腎保護作用が注目されるSGLT2阻害薬だが、少なくとも2型DM例では、服用後に「尿糖」が増えなければその保護作用は見られない可能性が示された。イタリア学術会議・臨床生理学研究所のEle Ferrannini氏らが大規模ランダム化試験(RCT) "CREDENCE"の亜集団解析として、11月8日、Diabetes誌で報告した。
同氏はかねてより、SGLT2阻害薬の臓器保護作用に「血中ケトン体増加」が関与している可能性を指摘している [Ferrannini E. 2017] 。
本解析の目的は、SGLT2阻害薬開始後の「尿糖排泄」増加幅と「心腎イベント」リスクの相関検討にある。
解析対象はCREDECNCE試験の亜集団である。
すなわち同試験の導入基準である「顕性アルブミン尿陽性」「推算糸球体濾過率(eGFR):30-<90 ml="" 1="" 73m="" sup="">2」等を満たした2型DM全4401例中、尿検体を得られた2543例が今回の解析対象となった。
なお、上記4401例はSGLT2阻害薬群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で2.6年間(中央値)観察された(早期中止)。その結果SGLT2阻害薬群ではプラセボ群に比べ、心腎イベントの相対リスクが30%、有意に減少したが、その点は今回解析の2543例でも同傾向だった。
上記2543例の「心腎イベント」発生リスクを、試験開始1年後の尿中グルコース/クレアチニン(G/Cr)比(尿糖排泄)四分位の「最大」群と「第3四分位以下」群(3群併合)間で比較した。
「心腎イベント」の内訳は「末期腎疾患・血清クレアチニン倍増持続・心/腎疾患死」である。
G/Cr比は「最大」四分位群が35 mg/mg、「第3四分位以下」群で0.4 mg/mgだった(全体)。
その結果、同じようにSGLT2阻害薬を服用しているにもかかわらず、試験開始1年後の「心腎イベント」のハザード比(HR)はG/Cr比「最大」四分位群の対「第3四分位以下」群で0.42 (95%信頼区間[CI]:0.30-0.61)と有意に異なった。
一方プラセボ群では、G/Cr比「最大」群と「第3四分位以下」群間の「心腎イベント」リスクに有意差はなかった。
さらにSGLT2阻害薬服用例では、G/Cr比「最大」群における転帰改善が「心不全(HF)入院」でも観察された。すなわちG/Cr比「最大」四分位群における「HF入院」HRは「第3四分位以下」群に比べ0.45(95%CI:0.27-0.73)の有意低値だった
「総死亡」もHRは0.56(95%CI:0.39-0.80)と同様だった。
Ferrannini氏らはこの結果を、(従来どおり)「尿糖排泄増加(血糖欠乏)による臓器のケトン体利用増加」によりもたらされたと考えているようだ。今回解析でSGLT2阻害薬群では尿中ケトン体がプラセボ群に比べ増加していたという事実も、その傍証とされた。
同様の知見として同氏らは、CANVAS試験追加解析などを挙げている。
同時にSGLT2阻害薬による浸透圧利尿増強によるヘマトクリット上昇(今回解析で確認)も、臓器保護的に作用している可能性も、同氏らは指摘している。
CREDENCE試験はJanssen Research & Development, LLC.から資金提供を受け実施された。今回解析に関する資金提供の有無は不明である。