株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【文献 pick up】日本人HFrEFに対するARNiの転帰改善作用は、開始時血圧の高低を問わずACE阻害薬と差なし―RCT"PARALLEL-HF"追加解析/Circ J誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-12-05

最終更新日: 2023-12-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本人の収縮機能低下心不全(HFrEF)に対するアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNi)による「心血管系(CV)死亡・心不全(HF)入院」抑制作用は、治療開始時血圧の高低を問わずACE阻害薬と差のないことが明らかになった。ランダム化比較試験(RCT)"PARALLEL-HF"の追加解析として11月21日、国際医療福祉大学の筒井裕之氏らがCirculation Journal誌で報告した。

対象の大半を欧米人が占めたRCT”PARADIGM-HF"では、ARNiがACE阻害薬に比べ「CV死亡・HF入院」を有意に抑制し、その抑制作用は治療開始時血圧が高いほど大きくなるものの、血圧の高低による交互作用は受けていないことが報告されている。

【対象】

今回の解析対象はPARALLEL-HF試験に登録された225例である。主な導入基準は、ACE阻害薬/ARB(RAS-i)服用下で「左室駆出率≦35%」の症候性心不全、かつ「NT-proBNP上昇」かつ「直近1年間のHF入院歴」が必要とされた。

【方法】

これら225例はRAS-i中止後、ARNi群とACE阻害薬群にランダム化され、二重盲検法で33.9カ月間観察された。今回の解析では開始時収縮期血圧(SBP)の高低で三分位群に分け(「≦114」「114-≦130」「>130」mmHg)、1次評価項目の「CV死亡・HF入院」リスクを、ARNi群とACE阻害薬群間で比較した。

【結果】

(1)全体解析・有効性(既報

225例全体の解析では、ARNi群における「CV死亡・HF入院」のハザード比(HR)は1.09(95%信頼区間[CI]:0.65-1.82)でACE阻害薬群と有意差はなく、減少傾向も認められなかった。

(2)開始時血圧別・有効性

開始時SBP別の解析でも、ARNi群とACE阻害薬群間の「CV死亡・HF入院」リスクに有意差はなく、またSBP高低に伴う交互作用も認められなかった(P=0.27)。ただしARNi群における「CV死亡・HF入院」抑制作用は、開始時SBPが高くなるほど減弱する傾向があった。ACE阻害薬群に対するHRは開始時SBPが低い群から順に「0.7」「1.0」「2.0」である。

先述のPARADIGM-HF試験とは逆の傾向が見られた。

(3)開始時血圧別・安全性

このように開始時SBP低値群ほど「CV死亡・HF入院」リスクが数字上は低減したARNi群だが、低血圧性有害事象も同様に、開始時SBPが低い群ほど多くなる傾向が認められた(ただし開始時SBPによる交互作用P値は0.18)。特に開始時SBP「<114mmHg」群では、ARNi群はACE阻害薬群に比べて低血圧性有害事象が有意に多かった(47.2 vs. 18.0%)。一方この群を含め「低血圧による服薬中止」率には両群間で有意な差はない(血圧の低い群から順に「22.2 vs. 7.7」「13.5 vs. 5.1」「5.3 vs. 5.9」%。交互作用P値=0.74。

PARALLEL-HF試験はNovartis Pharmaceuticals Corporationから資金提供を受け実施された。また著者9名中、最終著者を含む3名が執筆当時、同社社員だった。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top