No.5204 (2024年01月20日発行) P.44
小杉寿文 (佐賀県医療センター好生館緩和ケア科部長)
間宮敬子 (信州大学医学部附属病院信州がんセンター 緩和部門教授)
登録日: 2024-01-19
最終更新日: 2024-01-16
【質問者】小杉寿文 佐賀県医療センター好生館緩和ケア科部長
【がんサバイバーの痛み治療は,がん患者の痛み治療をおおむね包含している】
この問いに対する答えは,がんサバイバーの定義として何を採用するかによって変わってきます。
がんサバイバーは,がんと診断されたその瞬間にサバイバーとなり,がんの病期や病状などを越え,死の瞬間までの期間すべてが対象であるという定義があります1)。この定義を採用すると,がんの治療を受けて治癒した人,長期にわたって治療の合併症に苦しむ人,治療後に再発した人,終末期の人も皆等しくサバイバーです。
がん患者は文字通りがんに罹患している人であり,寛解した人はがん患者ではありません。ゆえに,がんサバイバーの痛みは,がん患者の痛みをおおむね包含しています。
がん患者の痛みには,①がん自体が原因となる痛み,②がんの後遺症による痛み,③がん治療が原因となる痛み,④がんとは直接関係のない痛み,があります。がん患者もがんサバイバーも,がんが原因の痛みはWHO方式のがん疼痛治療法に則って治療します。
がん以外の痛みの中のがんの後遺症による痛みには,たとえばがんの摘出術後の遷延性術後痛があります。がん治療が原因となる痛みには,がん化学療法による神経障害性疼痛,放射線療法後の痛みとして,口腔・咽頭粘膜炎,皮膚炎などの急性期の痛みや,数カ月以上経過して出現する放射線照射後疼痛症候群などがあります。がんとは直接関係ない痛みの例として,脊柱管狭窄症や片頭痛などがあります。これらは非がん性疼痛(急性・慢性)として取り扱います。
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