胸部X線で虚脱率を評価する。虚脱率が軽度であれば,経過観察とする。ただし,悪化する可能性もあるため,24~48時間後にフォローアップ目的の胸部X線を実施する。中等度以上の虚脱があれば,胸腔ドレナージを実施する。ドレーンは通常,局所麻酔下に第4肋間の中腋窩線上または前腋下線上に挿入する。ドレーンは,16~20フレンチ(Fr)を使用し,水封式排液装置に接続する。
胸部X線では,縦隔が健側へ偏位し,胸腔内圧が高まると静脈系を圧排し心臓への還流阻害からショック状態となる可能性がある。頻脈や低酸素血症を認める気胸の症例では,迅速な胸腔ドレナージが必要である。
肺の虚脱時間が3日以上と長い場合,再膨張時に肺水腫となる危険がある。肺水腫は,虚脱して完全に閉塞していた血管内に急速に血流が再開することで,血管透過性が亢進して起こる。再膨張性肺水腫は,胸腔ドレナージの処置直後から呼吸困難を訴える。胸部X線では,患側肺の透過性低下が認められる。再膨張性肺水腫を予防するためには,一気にドレナージせず時間をかけて肺を膨張させることが重要である。
胸腔ドレナージ,あるいは胸腔鏡下ブラ切除術を実施しても気胸が改善しない場合,胸膜癒着術を実施する。胸腔ドレーンから癒着剤を胸腔内へ注入し,胸膜癒着を起こしエアリークの停止を図る。使用する薬剤としては,テトラサイクリン系抗菌薬,50%ブドウ糖,OK-432(溶連菌抽出物)などがある。その他,自己血やフィブリン糊を使用することもある。
気胸において,再発例,胸腔ドレナージを実施しても改善しない症例,両側気胸,血気胸などでは,外科治療の適応となる。手術では,胸腔鏡下または開胸下に,ブラ切除・結紮・焼灼を行い,エアリーク部位を閉鎖する。症例によって,フィブリン糊,医療用材料(酸化セルロースシート,ポリグリコール酸シート)で被覆補強を行う。
難治性気胸に対して,胸腔鏡下ブラ切除術が行われるが,手術自体のリスクが高い場合,気管支鏡下気管支塞栓術が実施される。気管支鏡で,気胸のエアリーク部位を同定し,固形シリコン製気管支充塡材(endobronchial Watanabe spigot:EWS)を気管支内に留置する。
喫煙は自然気胸の危険因子であり,禁煙は重要である。
気胸は再発率が高い疾患である。
気胸を繰り返す場合,外科治療(胸腔鏡下ブラ切除術)が勧められる。
【文献】
1) 日本気胸・嚢胞性肺疾患学会, 編:気胸・嚢胞性肺疾患規約・用語・ガイドライン2009年版. 金原出版, 2009.
髙橋浩一郎(佐賀大学医学部附属病院呼吸器内科講師)