非びらん性胃食道逆流症(non-erosive reflux disease:NERD)は,逆流症状(典型的には胸やけ,もしくは逆流感/呑酸)を有するが,内視鏡で胃食道接合部に粘膜障害を認めない状態と一般的に定義される(ただし内視鏡前に胃酸分泌抑制薬が2週間以上中止されていることが望ましい)。この(広義の)NERDの中には,逆流モニタリング検査で病的な胃酸逆流を認める狭義のNERD,病的な胃酸逆流を伴わないが逆流に対する過敏性を有する逆流過敏性食道(reflux hypersensitivity:RH),病的な逆流も症状・逆流の関連(過敏性)も有さない機能性胸やけ(functional heartburn:FH)が含まれる。文献によってNERDの定義が異なるため,常に確認が必要である。
胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)は生活の質に大きな影響を及ぼすが,重篤な病態の原因にはなりづらい。もし心窩部痛や体重減少などの器質的疾患を示唆する症状を認める場合には,内視鏡や画像検査で悪性腫瘍スクリーニングが必要である。そのため,安易なプロトンポンプ阻害薬(PPI)テスト(PPI投与の反応性の有無のみで,GERDの診断を行う)は避けるべきだろう。PPI治療に対して抵抗性もしくは依存性が疑われる場合には,逆流モニタリング検査の実施が望ましい。
NERDに対してはPPIが第一選択となるが,30~50%の症例でPPI抵抗性と言われる。PPIや下記薬剤を処方しても改善に乏しい場合は,病態を調べるために逆流モニタリング検査の施行が望ましい。狭義のNERDと診断された場合はボノプラザンフマル酸塩が有効な可能性があるが,NERDに対するエビデンスが乏しく,ガイドラインでは推奨されていない。
RHやFHに対して有効な治療法は限られる。狭義のNERDやRHに対しては,腹腔鏡下もしくは内視鏡下逆流防止術が適応になりうるが,侵襲を伴う不可逆的な治療であるため,慎重な適応判断が求められる。
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