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成人成長ホルモン分泌不全症[私の治療]

No.5214 (2024年03月30日発行) P.37

高橋 裕 (奈良県立医科大学糖尿病・内分泌内科学講座教授)

登録日: 2024-03-29

最終更新日: 2024-03-26

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  • 成人において成長ホルモン(GH)の分泌不全により,内臓肥満など体組成異常とそれに関連した耐糖能異常,脂質異常症,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD),骨粗鬆症などの代謝障害と生活の質(QOL)の低下を呈し,生命予後が悪化する疾患である。

    ▶診断のポイント

    易疲労感,スタミナ低下,集中力低下,気力低下,うつ状態,性欲低下などの自覚症状およびQOLの低下をきたし,皮膚の乾燥と菲薄化,体毛の柔軟化,ウエスト/ヒップ比の増加などの身体所見を認める。

    検査所見として体脂肪(内臓脂肪)の増加,除脂肪体重の減少,筋肉量減少,骨塩量減少,脂質代謝異常,耐糖能異常,脂肪肝を認める。

    主に心血管合併症の増加に伴い死亡率が上昇する。原因として頭蓋内器質性疾患,手術および放射線治療歴,頭部外傷歴やくも膜下出血の既往,周産期異常(骨盤位分娩,出生時仮死など),遺伝子異常,小児がん経験者,特発性などがある。器質的疾患があり,上記の症状を認める場合には検査を進める1)。インスリン様成長因子1(IGF-Ⅰ)低値は参考になるが正常範囲の場合もあるので,診断にはGH分泌刺激試験が必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    成人GH分泌不全症のうち,重症のみがGH補充療法の適応となる。GH分泌不全症を含む下垂体機能低下症は,指定難病に認定されており医療費助成の対象だが,成因により認められない場合もあるため,GH分泌刺激試験を術前に行うなど注意が必要である。

    GH補充療法によって自覚症状およびQOLの改善,体組成異常・脂質代謝異常の改善,骨塩量増加および骨折リスクの低下,脂肪肝の改善を認める。後ろ向きの観察研究では,生命予後の改善が示唆されている。GHを補充すると同時に,他の下垂体ホルモン欠乏に対する適切な補充療法を行うことが重要である。GH製剤には毎日の注射が必要なdaily GH製剤と,週1回の長時間作用型GH製剤がある。後者ではアドヒアランスの向上,負担の軽減が期待できる場合がある。

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