バセドウ病は自己免疫疾患のひとつであり,甲状腺刺激ホルモン(TSH)レセプター抗体(TRAb)によって甲状腺が刺激され,甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで甲状腺中毒症を呈する。人口1000人当たり0.2~3.2人が罹患する「common disease」であり,20~30歳代の若い女性に多く,男女比は1:3~5程度と言われている。
臨床所見として,①頻脈,体重減少,手指振戦,発汗増加などの甲状腺中毒症症状,②びまん性甲状腺腫,③眼球突出または特有の眼症状,を呈する。これらの臨床所見のうち1つを認め,検査所見では血中遊離型甲状腺ホルモンFT4,FT3のどちらかまたは両方が高値で,TSHが低値で抑制されており(0.1μU/mL以下),TRAbもしくは甲状腺刺激抗体(TSAb)の陽性が認められれば,「確からしいバセドウ病」と診断される1)。確定診断には,放射性ヨウ素(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値,およびシンチグラフィでのびまん性の取り込み亢進を認めることが必要1)だが,核医学検査が施行可能な施設は限られているため,ほとんどの場合「確からしいバセドウ病」と診断した段階で治療を開始する。
バセドウ病の治療には薬物療法,外科手術および放射線ヨウ素(131I)内用療法があるが,わが国では初期治療としてほとんどの場合,抗甲状腺薬〔チアマゾール(MMI)またはプロピルチオウラシル(PTU)〕による薬物療法が選択される。妊娠初期の妊婦を除き,MMIが第一選択薬となるが,確からしいバセドウ病もしくはバセドウ病と診断した場合は,FT4の値によって軽症~中等症(5ng/dL未満)もしくは重症(5ng/dL以上)を判別し,軽症~中等症患者にはMMI 15mg/日から投与を開始する2)。重症例にはMMI 15mg/日に加え,無機ヨウ素を併用する2)。抗甲状腺薬と無機ヨウ素は同時に服用できる。安全性と有効性の両面から,MMIは初回投与では15mg/日以上は用いない2)。PTUを用いる場合も,やはり初回投与量は軽症~中等症および重症を問わず150mgまでとする2)。なお,原則MMIは単回(1日1回)投与とし,PTUは分服とする2)。また動悸や頻脈および手指振戦に対しては,β遮断薬を併用する。抗甲状腺薬による薬物治療を18カ月以上継続しても寛解に至らない場合は,根治療法である外科手術および131I内用療法も考慮する2)。
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