副腎からのコルチゾール分泌とその作用が過剰になり,特徴的な身体徴候とともに心血管,代謝,骨,皮膚,精神など全身の合併症をきたす。副腎腺腫からのコルチゾール過剰分泌を狭義のクッシング症候群と呼び,下垂体腺腫からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰が原因となる病態はクッシング病として区別される。悪性腫瘍などに伴う異所性ACTH分泌や薬剤によっても同様の病態が生じる。
満月様顔貌,野牛肩,中心性肥満,皮膚菲薄化,腹部赤色皮膚線条,近位筋力低下,高血圧,耐糖能異常,骨粗鬆症,月経異常,多毛,痤瘡,うつ症状など。ACTH過剰で色素沈着。
血中・尿中コルチゾール高値,低カリウム血症,末梢好酸球減少。病態によりACTH低~高値。
デキサメタゾン抑制試験,CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)負荷試験,コルチゾールの日内変動。病態により胸腹部CT,アドステロールⓇ-Ⅰ131注〔ヨウ化メチルノルコレステノール(131I)〕による副腎シンチグラフィ,造影下垂体MRI,下垂体静脈洞サンプリング,オクトレオスキャンなど。
根治をめざした腫瘍摘出が原則である。術後は,内因性コルチゾール分泌回復に時間がかかる(6カ月~数年)のが一般的であり,その間コートリルⓇ(ヒドロコルチゾン)を補充し,徐々に減量・中止する。早急に血中コルチゾール濃度を低下させるべき重症例,手術不能・不完全例,再発例,副腎癌転移などでは11β-水酸化酵素阻害薬または3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素阻害薬を使用する。一方,オペプリムⓇ(ミトタン)は細胞毒性により束・網状層を破壊し,作用は緩徐でエスケープ現象はない。進行副腎皮質癌では,EDP(エトポシド,ドキソルビシン,シスプラチン)+ミトタン療法が,病態進行を遅延させると報告されている1)。投薬量は,血中・尿中コルチゾール値,臨床症状等により注意深く調整する。
治療に伴う副腎不全が予想される場合,適宜または治療開始時より生理量以上のコートリルⓇの補充とともに,高コルチゾール血症に伴う高血圧や糖脂質代謝異常など,合併症の厳格な管理と感染症予防を行うことが肝要である。
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